こんにちは
ペン画家として活動しています安藤光です。
今回は自分が制作している作品について改めて見つめ直してみたので、
私の制作に対するスタンスや手法などあれこれを書いていこうと思います。
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絵柄の種類
わたしの絵は大きく分けると2種類あって
①単色線描画・・・
ボールペンや万年筆など1色で下書きなしに四角や丸など図形をひたすら描いていく線描画
②細密彩色画・・・
①の線描画の図形一つ一つを、ボールペンなどで塗っていく塗り絵手法の色付きの作品
があります。
※使用画材によってはさらに分類できますが、
あくまで「大きく分けると」ということで・・
細密線画について
上の作品は
下書きやイメージはせず、一本の万年筆と1色のインクのみで描いています。
画面の濃淡は左利きが故のペンの紙との接地角度、筆圧や紙面の微細な繊維やほこりを巻き込んだ際のインクの出具合、知らずうちに素手で紙に触れてしまった際の油脂などで制作環境の日々の微妙な差異で偶然発現するものです。
微細なパーツをひたすら描きこむことで構成されるこの作品は、作者の意識・意図を除外し、より作業的になるよう描いていきます。
なぜなら制作過程の中で、例えば実際はただ不定形な雲の形が何かに見えるといったように未知のものというのは脳にとっては多大なストレスであり、負荷を下げるため無意識に既知のものへ置き換えて当てはめようとする錯覚(パレイドリア現象)が生じます。
そんな錯覚に抗いながら人間が持つ錯覚にとらわれた限定的なイメージを崩し、より作業的に描くことで無意識に疑似的なフラクタル構造に収束していきます。
この世界の法則の一つである魅力的なフラクタル要素を抽出し、画面上に表せるのではと考え、制作しています。
細密彩色画について
この緑の作品は黒ボールペンで先に線画を描いて
その描きこまれたパーツを1つずつカラーボールペンで塗っていくという手法で制作しています。
だいたい塗る過程の前にルールを設定します。
例えば・・・
・使う色を限定する
・同じ色は隣接しない
・規則性があるマスは規則的に塗る
などなど
すべてのマスを規則正しく塗るのではなく規則の中に不規則を混在するように意識しています。これは自然の造形にも見られる特徴で、古来から人間はそこに癒しや魅力を感じてきたのです。その要素を作品に取り入れています。
その他作品(ガラスペン画)
これらの作品はガラスペンを使用して描いています。
ガラスペンとはガラス製の付けペンの一種で、インクを複数ある溝に吸い上げ筆記します。インクは万年筆用の混色できる顔料インクを使用しています。ボールペンなどと違い色を薄めたり混色でき、洗浄も容易ということと、付けペンよりインクを多く吸えるので長時間筆記ができるのが特徴です。
2色を別々に吸いあげた場合、筆記中に後に吸い上げた色からだんだんと先に吸い上げた色に遷移していきます。また筆記角度によって使用する溝が異なり意図しない色味や濃淡が現れます。このように作者の制御から離れ、ガラスペンの特徴を自分の画風で最大限に活かす画法を試みた作品群となります。
テーマやモチーフ分析
活動当初から現在に至るまで自分が何を描いているのか分析するならば、
例えるならひたすら黙々と積み木を積んでいたい、
膨大な時間かけて積み上げられたときに
いったい何が出来るのかを探求したい好奇心が幼少のころからあり
(自然界に存在する*フラクタル構造が発想源と考えられる)、
それを実現するために制作しています。
なぜ無意識的に日常に存在するフラクタル要素に惹かれるのか
人類がまだ自然に近かったころから遺伝子に刻まれた自然界の造形に由来すると考えられます。
炎の揺らぎや木目、自然に安心、癒し、魅力を感じるのはそのためで、
幼少の頃から無意識に惹かれ、
自然風景を描くのではなくその「要素」を抽出して
自我を排除し単純な描く行為の繰り返し独特な細密画となったと考えられます。
*フラクタル構造・・・自己相似性(元の形の縮小した形を備えている性質)を有する構造であり、
自然界には数学で扱う円や三角形、球、直方体などの整った形とは異なる
不規則で複雑な形が至る所に存在する。その複雑な形の一部を取り出して拡大してみると、
元の全体の形と同じような複雑な形をしている。
参考図書『フラクタル: 混沌と秩序のあいだに生まれる美しい図形』(Amazonリンク)
おわりに
いかがでしたでしょうか。
理系出身で絵を習ってきたわけではないので技術は皆無で、
我流で十数年描いてきました。
まだまだ自分が描いているものを言語化しきれていませんが、
画家人生をかけて追及していくつもりです。
今後も各地で展示活動をしていきますので
もし原画を見る機会があれば今回の記事を思い出して鑑賞していただけたら幸いです。
ではまた!