展覧会アーカイブ:個展 -未分化のかたち-

展覧会概要

会期:2022年10月8日(土)-10日(月)
   11時-19時(最終日17時)
会場:Breeze Bronze Home(神楽坂)

これまで制作を続けてきた中で「自分はいったい何を描いているのか」を本質的なテーマとし、現在に至るまでの自作品を分析・考察した展覧会の第一弾。

写経のように無心状態を維持して制作するスタイルと、学生時代に学んだ生物工学の知識や経験を活かし、未分化な植物細胞(カルス)を例に、「何物でもない状態であるがゆえに如何様にも解釈できる」を本展のテーマとした。

個展コンセプト文

展示風景

-未分化のかたち-

まず「分化」とは特定の機能を持つ細胞に変化することを指します。
例えば植物の受精卵が細胞分裂を繰り返して根や葉を形成していく過程などです。
最初は何にでもなれる細胞(受精卵)が、それぞれの機能をもった組織へと変化していき、
また、分化した細胞がその特徴を失った状態にリセットすることを脱分化と言います。
ちなみに人間を含む動物の細胞は一旦分化するとリセットが難しく、脱分化に成功したしたのがiPS細胞(2006年京都大学で世界で初めて人工的に作られた細胞)です。
そこでタイトルにも含まれている「未分化」とは何にでもなれる機能(分化全能性)をもつ細胞が分化する前の状態をいいます。
植物細胞は人工培養すると細胞が増殖して不定形の何にでもなれる状態(未分化細胞)の細胞群ができ、これをカルス(calllus)と言います。

カルス(薄緑色の不定形部。モヤシ状の濃い緑色部は再分化個体)
Igge – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4407690による

本展では植物細胞のカルスのように「何にでもなれるが何物でもない」不定形で未分化な状態と、制作中に脳が引き起こす錯覚や潜在意識に抗い、下書きやイメージもなく何物でもない不定形であろうとする制作スタイルと重ね、個展タイトルを「未分化のかたち」としました。新作を加えた従来の作品の中から「未分化」の要素を持つペン画を中心に展示します。

カルスが持つ「何にでもなれるが何物でもない」特徴のように作品を通して一旦身に付いた常識や視点をリセットし、新しい見方や解釈を日常生活の中で発見する一助となることを期待します。

展示風景