【画家で生きていく】売り絵と売れる絵の違いとは

売れる絵を描くという話をすると芸術作品はそんなこと考えない、お金に変えるものじゃないという意見がよく出ますが、そこには絵画や彫刻などの作品は神聖な芸術とみるべきという考えが根底にあると思います。
会場を借りて発表する目的ならそれでいいと良いと思いますが、企画画廊で販売も目的とするなら店舗で取り扱う「商品」という面も考えて「売れる絵」を描くことも大事なことで
その意識を持つことも作家として大事な要素だと思います。
そこで「売れる絵」と「売り絵」の違いを解説していこうと思います。

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売れる絵が必要な時

そもそも「売れる絵」を描かなきゃならない時ってどんなときか
私の場合は企画展に誘われた時だと思っています。
企画展とは企画ギャラリー、画商、コレクターなどが主催する展覧会で
作家が会場を借りるためにお金を払うというものではありません
主催者が会場費を負担、売り上げから例えば5割支払うというような展覧会です。
ちなみに作家さんが参加費を払うグループ展は、
企画展と銘打っていても一般的には「企画展」とはいいません。
←※勘違いしている人が多いのでちゃんと勉強してください

企画展に誘われるということ

企画展の誘いがくるということは画廊や企画者がその作家にある程度の期待を持ち、
一定のリスクを背負って声をかけてくれているということです。
しかし、作家の中には「無料で展示が出来てるラッキー」と考えてしまう作家もいます。
駆け出しの私もそうでした。「今までお金を払って出していたのにタダで展示できるなんて!」って。
そんな勘違い作家が自分勝手に自己満足の作品を出してしまう場合が結構あります。
これはある程度作家歴のある方でも
趣旨に合っていない、期待外れの作品を出してくるとかがっかりしたという話も聞きます。
難しいですね・・・


作家は売れようが売れまいが無料で作品を発表できればいいということかもしれませんが、
せっかく自分に声をかけてくれた企画画廊には売れなければ一円も入らないし、
期待を裏切る結果になるということでもあります。

ここで作品が「売れる」ということは大事なことで、
売ることを意識しないで自分で自由に作品を発表したいならば会場を借りてやればいいと思います。
作品を親戚や友達に「ほめてもらう」ことと、
知らない人やコレクターに「買ってもらう」ことの間には天と地の差があるんですね。
この意識や視点の違いもプロとアマチュアとで変わってくるのかなと思います。

売れる絵とは

「売れる絵」を描くということは「売り絵」と考えて嫌悪感を持つ人がいると思います。
企画画廊での展覧会の場合は飾りやすい絵を意識するべきだと思います。ほかにもいろいろな要素や条件もあるでしょうが売れる絵とは、売り絵を描けとか流行りの絵を描けということではありません。

今売れていても流行に乗っているだけかもしれませんし、今売れてなくても将来売れるようになるかもしれません。
いずれにしても「売り絵」ではなく「売れる絵」を描いていくことがプロの作家だと思います。

プロの定義

これは「プロ」の定義にも繋がる話で、
プロとは・・・継続して適正価格でお金をいただいたら(取引が行われていれば)プロ
という認識です。お金をいただくということは責任が発生するからです。
安売りして売れたからプロということでもありませんし、
一回きりの取引しかないのにプロとは名乗れないと思います。
(過去に取引があっても「今」はプロではない)

売り絵と売れる絵の違い

「売り絵」とは・・・一般うけしそうなモチーフのきれいな絵や有名作家や今流行っている人気作家に似たような作品を何点でも描くということで、これでは芸術性よりも技術コンテストになってしまう。そんな作品は名札を変えても誰の絵か分からないし、商品としての個性が感じられない作品になってしまいます。

「売れる絵」とは・・・どんなテーマであろうとその作品が暗くて怖い絵であろうと実際に売れる作品のことです。売れる絵を描くことは世間のニーズに合わせた「売り絵」を描くと勘違いする人もいますが「売れる絵」というのはその作家の個性を生かしながらアート商品としても「売れる絵」を描いて欲しいという意味です。

じゃあ実際に売れる作品とはなんなのか・・・
いくつか条件があると考えています

実際に売れる絵とは

飾りやすい絵

飾りやすい絵とは
比較的小さな絵で額が暗いよりも華やかで明るい色の額のほうが飾りやすいです。
これは東京や大阪などの大都市の場合で比較的に小さな家に住む都会の傾向を表しています。
逆に地方で展示するなら落ち着いた風景画などの絵が好まれる傾向にあります。
大きい家が多いので大都市より大きい絵が売れやすいと言えます。

多くの人が共感する要素がある絵

売り絵とは一般受けしそうなモチーフと書きましたが、
実際難解な作品よりはみんなが共感する作品がいつの時代でも求められる傾向にはあります。
共感性がある作品でも売れる絵としての作家の個性がにじみ出てる作品はいくらでもあります。

一般受けしそうな絵を描いた途端、
売り絵になってしまう場合、
【あなたにとっての売れる絵】のデータの蓄積がまだ足りていないだけなんだと思います。


自分の売れる絵を探す

あなたにとっての売れる絵とはなんでしょうか。
個展など自分の作品が一挙に並んでいる展示で絵が売れた時
何回もそういう展示をしているとこのシリーズは全然売れないけど、この色、モチーフ、このサイズの絵はやたら売れるなと感じる時があります。
例えば、赤より青い絵、人物より風景画、などなど
これは売れた絵のデータがたまっていくと傾向が見えてくるものです。
それがあなたにとって売れる絵なのです。
企画展にはそういったあなたの経験上売れる、あなたの絵柄で描いた(テーマがあればそれに沿った)作品を出せということなんです。
チャレンジした作風などは個展やグループ展で売れる絵柄の作品と一緒に出して、
お客さんの反応をうかがえばいいのです。そうやって経験値が蓄積していき、
また新しい「売れる絵」が見つかるかもしれません。

要注意なのはその売れる絵ばかり量産してしまうことです。
目的が「売れるから描く」になってしまいがちで
そんな量産された絵は「売り絵」となってしまいます。
展示をはしごしているコレクターさんには容易く見透かされてしまうでしょう。

おわりに

どんな商品もその時代の状況や市場を調査・研究し、造り手の個性や独自性を生かした商品を創造することで社会に問うことが大事です。「売れない商品」には必ず何か理由がある(質、価格等)はずで、それを反省し、次の商品開発につなげる探求をし続けることが重要です。
友達や仲間から評判が良くてもそれは単なるお世辞やほめ言葉であり、
商品である以上新しいお客さんやリーピーターに買ってもらうことが大事です。

従って、芸術作品についても同じような態度が必要で、売れないような欠陥商品を発表することは芸術性を問う以前の問題です。いわいる「売り絵」やその時代の共感性を全く考えていない作品、自己満足の作品は商品としても欠陥品で「売れない絵」ということです。

いかがでしたでしょうか。これから活動を始める人、活動しているけど企画展未経験の作家さん、
企画展における責任の重さや売れる絵のスタンスなどが少しでもご理解いただけたら幸いです。