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個展を開こうと考えたとき、必ず準備しなければならないのが「案内はがき(DM)」です。展示会場や日時を伝える役割はもちろんありますが、DMにはもうひとつ大事な意味があります。それは「個展の顔」として、あなたの作品や世界観を初めて目にする人に伝える役割です。
しかし、実際に制作に取りかかると「どの作品を載せればいいのか」と迷う人が多いのも事実です。作品によって印象が大きく変わり、来場者数や展示の期待感に影響するからです。特に初めて個展を開催する方にとっては、作品の選び方が難しく感じられるでしょう。
この記事では、初めて個展をやってみたい人に向けて、DMに掲載する作品選びの具体的な基準やステップを分かりやすく解説します。これを読めば、個展案内はがきを自信を持って作れるようになります。
なぜDMに載せる作品が重要なのか
DMは「個展の第一印象」を決める
案内はがきは、個展に来てもらうための最初の接点です。郵送で届いたり、ギャラリーに置かれたり、友人に手渡しされたりと、まだ会場に足を運んでいない人が「どんな展示なのか」を想像する材料になります。つまりDMの作品写真は、あなたの展示に対する第一印象を決定づける存在です。
第一印象は数秒で決まると言われています。パッと見て「行ってみたい」と思わせるか、「ふーん」で終わってしまうかは、DMに載せる作品の力にかかっています。
DMは「記憶に残るツール」
SNSでの告知も大切ですが、流れていく情報に比べてDMは物理的に手元に残るため、視覚的にも印象的です。冷蔵庫に貼ったり、机に置いたりして目に触れる回数が増えれば、来場につながる可能性も高まります。そのとき、印象の薄い作品よりも強いビジュアルを持つ作品が載っていた方が効果的です。
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DMに載せる作品を選ぶ6つの基準

1.足を運んでもらうための魅力ある作品
内容に興味を持ってもらい、
会場に足を運んでもらうためには、魅力ある作品画像が必要不可欠です。
思わずDMを手に取ってもらい、「この展覧会を見に行きたい!」
「もっとほかの作品を見てみたい」
と思ってもらえるような作品を、よく吟味して掲載するようにします。
巨匠の名画展であれば、
代表的な1作品が掲載されているだけで十分なアピールになりますが、
個展ではなかなかそうもいきません。
個展のDMデザインで忘れてはならないのは、ほとんど、あるいは全てのお客様はあなたの作品を知らない、ということです。
経験上DMに掲載する作品はメインの作品1点が多いのですが
掲載する作品画像は、2~3枚程度というのも選択肢の一つです。
2.飾りやすいサイズの作品
DMに掲載する作品は新聞やメディアに掲載されたり、
その展覧会で一番多く人に見られる作品ということです。
そして多くの人の目に触れるということは売れることも多いです。
お気に入りで目を引く大作を掲載するのもいいんですが、
私はあえてお手頃で飾りやすい作品を掲載するようにしています。
質が高い作品を描き続けていればサイズ関係なくどれもが魅力ある作品になるからです。
3.印刷映えを確認する
意外と見落としがちなのが印刷での見え方です。
特にペン画や水彩など繊細な作品は、縮小すると線や色が潰れてしまいます。
印刷所に依頼する前に、自宅のプリンターで縮小した試し刷りをして確認すると安心です。
また、色味がモニターと印刷で異なることも多いため、彩度や明度を微調整して仕上げるとクオリティが上がります。
上記でも触れましたがDMの作品は新聞に載る可能性が一番高いです。
映える作品じゃないとせっかくのアピールチャンスを活かせません。
4.展覧会のテーマに沿っている作品
個展には必ずテーマや方向性があります。
「自然を題材にした作品」「心の動きを表現した作品」など、
展示全体で伝えたいことを象徴する作品を選ぶのが基本です。
例えば、抽象表現をテーマにしているなら、最も抽象的な魅力が伝わる作品を。風景画を中心に展示するなら、その中でも代表的な風景を。DMを見ただけで展示内容が直感的に理解できることが大切です。
複数枚掲載するなら共通する世界観、絵柄で統一感が出ます。
チャレンジ作品よりかは代表作と同じような技法や絵柄の安定した作品のほうが「その作家の絵」として伝わりやすいかと思います。
5. 実際に展示する作品から選ぶ
DMに載せた作品が展示会場にないと、来場者は落胆してしまいます。DMは「おとり広告」ではなく、展示の入り口です。必ず展示予定の作品から選びましょう。
実際には出展しない過去の代表作を載せてしまうケースがありますが、これは避けた方が無難です。「DMで見た作品がない」と思われると、信頼を損ねてしまいます。
6. 制作の「今」を示せる作品
過去の代表作を見せるのも一つの方法ですが、個展は「いま現在の自分を見せる場」です。新しいシリーズや挑戦的な作品の中から選ぶことで、観客に「この作家はいま何を表現しているのか」が伝わります。
作品を通して「現在地」を示すことは、自己紹介の意味もあります。DMを見た人に「この人は今こんな作品を作っているんだ」と伝えることで、興味を持ってもらいやすくなります。
DM作成の実践ステップ

ここからは、実際に作品を決めてDMを作るまでの流れを具体的に解説します。
ステップ1:展示テーマを言語化する
まず「今回の展示で何を見せたいのか」を一文でまとめましょう。例えば「日常の風景を抽象的に再構築する」「震災後の心の変化を線で表す」などです。テーマを明確にすると、それを象徴する作品を選びやすくなります。
ステップ2:候補作品を3〜5点ピックアップ
いきなり1点に絞らず、まずは複数候補を出すことが大切です。そのうえで「テーマ性」「インパクト」「印刷映え」の観点で比較し、最適な1点を選びます。
ステップ3:縮小印刷で試し確認
候補が決まったら、実際のはがきサイズに縮小してプリントアウトしましょう。モニター上で良く見えても、印刷すると印象が変わることがあります。文字情報を入れたときにバランスがとれるかもチェックしてください。
DM以外の告知ツールとの使い分け

近年はSNSやウェブサイトでの告知も欠かせません。DMは「手元に残る強い印象」を与えるツール、SNSは「リアルタイムで情報を広めるツール」と役割を分けて考えるのが効果的です。
- DM:展示の顔。最も象徴的な作品を1点に絞る。
- SNS:制作過程や複数作品を紹介し、期待感を高める。
- ウェブサイト:会場までのアクセスや詳細情報を補足する。
それぞれの媒体を組み合わせて使うことで、告知効果が高まります。
終わりに
いかがでしたでしょうか。
ただDMを漠然と作るのではなくこういった条件を考えて作ってみるのはいかがでしょうか。
他の作家のDMをマメにチェックするのもおすすめです。
個展や二人展のDMデザインに迷ったときにいただいた展覧会のはがきを見返すようにしています。
ほかにも作品を選ぶ条件があると思いますし、
なかなかすべての条件を満たすのは困難です。
実際私もすべての条件を満たせていません。
(満たしたとしてもデザインがいまいちだったり・・・)
活動を通して少しづつ改善していければいいと思います。
この記事があなたの画家ライフの一助となれば幸いです。