「言葉にしようとした途端、安っぽく感じる」
「“説明しすぎ”って思われそうで怖い」
そんなあなたへ。
アート作品の解説は“余計なノイズ”ではなく、“作品を届けるための橋”です。
この記事では、「アート作品 解説書き方」に悩む作家さんに向けて、
伝わる作品解説の書き方のコツと例文を紹介します。
あなたの言葉で、あなたの世界をより深く、正確に届けましょう。
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なぜ「作品解説」が必要なのか?

見れば伝わる?は作り手の幻想
作家は「見ればわかるだろう」と思いがち。でも、それは**“その作品が生まれた背景”をすでに知っている**からです。
鑑賞者はあなたの思考も制作プロセスも知りません。
だからこそ、言葉での補助が必要です。
解説は「答え」ではなく「入口」
作品解説は、正解を押し付けるためのものではなく、「この作品とどう向き合えばいいか」のヒントを渡すもの。
解説=“読解の鍵”であり、“答えの提示”ではない。
作品解説を書く前に考える3つのこと

① 誰に向けて書くのか
- 初めてあなたの作品を見る一般の人?
- 美術に詳しいギャラリースタッフ?
- コレクターや審査員?
対象が変われば、使う言葉も語り口も変わります。
基本的には**「美術に詳しくない一般鑑賞者」を想定**しておくと失敗しません。
② どこで読まれるのか
- 展覧会場のキャプション?
- ポートフォリオ?
- SNSやHP?
展示キャプションは短く明快に、
ポートフォリオはやや丁寧に、
SNSでは会話調で。媒体ごとに調整しましょう。
③ どこまで「説明」するか
「この色にはこんな意味がある」と細部まで語ると、受け手の想像の余地が消えてしまうことも。
解説は“3割開示”くらいがちょうどいい。
伝えたい意図のコアを言語化しつつも、断言しすぎず、余白を残すのがコツです。
伝わる作品解説の書き方5ステップ
Step 1:まず、自分の言葉でざっくり語る
「この作品で伝えたかったことは?」
「描くことでどんな感情を整理していた?」
誰にも見せないつもりでメモ帳に書き出してみましょう。
Step 2:「何を描いたか」より「なぜ描いたか」に注目
モチーフや技法の説明だけでは、ただの図鑑。
それよりも**「なぜそうしたのか?」という動機や背景**を意識して書いてみてください。
Step 3:受け手の視点で読み直す
- 難しい言葉を使っていないか?
- 説明が長すぎないか?
- 感情的すぎたり、抽象的すぎて伝わらない部分はないか?
主観100%で書いた後、受け手の視点で冷静に読み返す作業が必要です。
Step 4:表現を整える
難しい言葉をわかりやすく、感情表現を自然な文章へと整えていきます。
文章のリズムや余白も意識して、詩とエッセイの間くらいのニュアンスを目指しましょう。
Step 5:最後は声に出して読む
文章のリズムや違和感は、音読すると驚くほど分かります。
言葉が浮いていないか、詰まりすぎていないかを確認し、読みやすさを調整しましょう。
解説のNG例と改善例
❌ NG例
この作品は青と赤の対比を用いて内面の葛藤を象徴的に表現している。混乱と調和の間に揺れる心象を多層的に反映させた。
→ 難解でふわっとしている。読んでも頭に残らない。
✅ 改善例
迷いや不安が続いた時期、感情を色で吐き出すように描いた作品です。青は自分を落ち着けたい願い、赤は収まりきらない衝動を表しています。相反するものが、同じ場所に共存する感覚を探ってみました。
→ 誰でも読みやすく、感情の入り口が見える。表現は丁寧だが、鑑賞者の想像も許している。
よく使われる構成テンプレート3つ
【型①】感情 → 制作動機 → 表現手法
●●という出来事があり、そこから強く感じた●●を描こうと思いました。
モチーフには●●を選び、色や線の使い方でその気持ちを表現しています。
【型②】問い → アプローチ → 観客への投げかけ
「●●とは何か?」という疑問からこの作品を描き始めました。
私なりの視点で●●を表現していますが、見る人がそれぞれに感じてもらえたら嬉しいです。
【型③】物語形式
小さな出来事から始まった、ある思いがあります。
この作品は、その思いが徐々に形になっていった過程の一部です。
あなたにも似たような感情があれば、きっと何かが響くかもしれません。
実際の作品解説・例文3つ(用途別)

【展示キャプション用(短文)】
静寂の中に潜む衝動を描きました。外には出せなかった感情の残響が、線となってあらわれています。
【ポートフォリオ用(やや丁寧)】
一見すると静かな画面ですが、実はとても感情的な時間から生まれた作品です。感情が揺れ動くとき、私は無意識に手を動かして線を重ねます。思考ではなく、衝動に任せて描いた線が、結果として自分の内面を映す鏡のようになることがあります。
【SNS投稿用(親しみやすく)】
感情がグチャグチャな時期に描いた作品です。
スッキリさせたくて線をひたすら重ねたら、意外と静かな画面になって不思議…。
自分の中にあった“静けさ”を再発見したかもしれません。
おわりに
作品の「意味」は、あくまで作家と鑑賞者の間にあるものです。
だから、解説を書くときも“正しく伝える”より“正直に伝える”ことを意識してみてください。
あなたの言葉で、作品の余白を彩ってみましょう。
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