万年筆の魅力とは?ペン画家が万年筆を選んだ理由

こんにちは!ペン画を描いて展示活動をしているペン画家の安藤光(あんどうひかる)と申します。
この記事は過去に様々なペンを使ってペン画を描いてきた私が、
なぜ 万年筆 を使うようになったのかをお話していこうと思います。

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万年筆の魅力

皆さんは万年筆を使ったことはありますか?
ボールペンやミリペンやGペン(つけペン)など線を描く道具ってたくさんあります。
たくさんあるペンの中でも万年筆は、
ペン先が紙を擦る感触、
インクのグラデーション、
Gペンほどではない線の強弱、
筆圧0で紙にペン先を置くだけのなめらかな筆記感
など独特の書き味があります。

最初に買った万年筆

はじめて買った万年筆は「パイロット社」の「カスタム74 EF(極細)」でした。

初めて買ったパイロット社のカスタム74


そもそも万年筆はBやFなど太さの規格があります
EF-エキストラファイン-極細
F-ファイン-細
M-ミディアム-中字
B-ブロード-太字

など
極細の線が引けるペンを探していた当時、
万年筆の極細は1万円以上のものしかなかったので
1万円台のスタンダードかつペンの太さにEFがある
パイロット社のカスタム74を選んだのでした。

インクの豊富さ

手持ちの顔料インク

万年筆 用のインクって実はインクの本が出るほどたくさんあります。
最近では混色できるインクやインク用の薄め液など自分でオリジナルインクを作れるようになり、
絵を描くうえでも大分表現の幅が増えました。

ちなみに私は混ぜられる顔料インク「ストーリアMIX」を使っています。

ペン画に万年筆を選んだ理由

なぜ 万年筆 を選んだかというと、
・ボールペンより豊富な顔料インク
・付けペンより長時間インクを補充しなくとも描ける筆記性
・ある程度ペン先の向きを気にしなくても描ける
・適度に擦れて自然に濃淡が出る

などの条件を満たす筆記用具だったからです。

ボールペンより豊富な顔料インク

そもそもペン画を描き始めた頃は「パイロット社」極細ボールペンの「HI-TEC-C」を使っていました。
ペン画を描いて数年後、とある画商さんにペンで描いた絵は10年後には線が消えてなくなると言われます。
その頃はペンのインクをそこまで気にしていなくて染料・顔料のインクの種類があることも知りませんでした。ペン画を描くものとして圧倒的に勉強不足だったんです。
「HI-TEC-C」は確かにバイオポリマーインキとあり染料とも顔料とも記載はないんです。
しかしながら描いた線は水に溶けるというのは当時から知っていました。
よってバイオポリマーインキ自体はバインダー(色を接着する糊の役割)で色材は水溶性が特徴の染料由来のものなのではと考えます。

インクの種類

染料インクとは・・・
水に溶ける性質でプリンタや筆記用具のインクに使われます。
染料は溶剤に溶けるので混色して自在に色が作れるのが特徴です。
水に溶けるため濡れると文字が滲みやすく、光によって色褪せしやすい性質があります。

顔料インクとは・・・
顔料は色のついた細かい粒子でできています。
乾くと水には溶けなくなり染料に比べて耐水性、耐光性が優れています。


絵を描いて販売する以上耐久性も問われるわけで・・・
『絵を買って飾っていたら線が薄くなってきた、色褪せてきた』とクレームにも繋がりかねません。
自分の絵もなるべく長く楽しんでいただけるように
顔料インクの極細ペンを探すようになったわけです。


そこでいろいろなペンを検証していった結果、
顔料インクが使える 万年筆 にたどり着きました。

(※最近は混色できる顔料インクも大手メーカーから発売され
好きな顔料インクを作れるようになりました。)

つけペンより長時間インクを補充しなくとも描ける

インクを大量に保持することで長時間筆記できる

つけペンとはペンの先端にインクを付けて筆記するペンでよく漫画家さんがつかうGペンや丸ペンなどの総称です。
万年筆 もペン先は似たような形をしていますが、
ボールペンのように胴体部分内部にインクを溜めておく機構が付いています。

インクの補充方法

万年筆のインク補充方法にはいくつか種類あり、
主に


コンバーター式

・・・インクの入った瓶(以後インクボトル)からスポイトのように吸い上げてインクを補充する
<メリット>
インクボトルは色が豊富。あるメーカーにおいて、カートリッジで売られている色が、インクボトルでは販売されないということは、ほとんどない。カートリッジよりも、安上がり。

<デメリット>
インクボトルを使い切るのに時間がかかる。
気に入った色ならよいが、そうでない場合は、使い切る前にインクが劣化してしまうことがある。
コンバーターにインクを注入する手間がかかる。
インク入れ替えの際はペン先だけでなくコンバーターの洗浄も必須=手間がかかる。


カートリッジ式

・・・インクがすでにタンク内に入っているタイプ
プリンタのインクのように無くなったらタンクごと交換する。
<メリット>
扱い方が簡単で手間がかからない(ただしその場合は同じメーカー・色であること)。
外出先で 万年筆 をたくさん使う場合(学校や職場など)におすすめ。

<デメリット>
インクボトルに比べて、割高
色の種類がとても少ない。インクはボトルで売られるのが主流なので、
あるメーカーにおいて、インクボトルで売られている色が、カートリッジでは販売されないことが多い。


の2種類があります

このように付けペンよりもインクを大量に保持することで長時間筆記できるのが特徴です。

個人的にコンバーターとカートリッジ両方使ってみた感想ですが
冬など寒い時期にカートリッジの入った万年筆を握るともともと冷たい軸内の温度が体温で上昇しカートリッジのタンク内の空気が熱膨張して、インクが押し出されポタっと垂れる傾向にあります。
コンバーターではその現象が起こりませんでしたので私はコンバーターを使っています。

ある程度ペン先の向きを気にしなくても描ける

万年筆 と出会う前はつけペンも使っていました。
しかしながらつけペンは強弱などさまざまな「線」を描くのには向いていますが
ペン先が一定の角度や向き以外では描きにくく
〇や◇などの「図形」を描くには不向きで
自在に線を引けるようになるにも練習が必要だと感じました。

一方万年筆のペン先に丸い金属が溶接されていてペンポイントといいます。

万年筆の先端部分

その部分には非常に硬い摩耗に強い金属が使われていて
この部分を研磨したり調整する事で線幅などの書き味が変わります。
万年筆が滑らかにある程度向きや角度を気にしなくても描けるのは
このペンポイントがあるからなんです。

(2024年1月時点)最近ではペンポイント付きの付けペンという文具も大手メーカーから発売されています。
・いろうつし
・hocoro(ホコロ)

適度に擦れて自然に濃淡が出る

1色のインクで勝手に濃淡が現れる

これは私が絵を描くうえで大事にしている要素で
長時間描いているうちに線が擦れてきて偶然の濃淡が出る筆記用具を探していました。
顔料を使ったゲルインキボールペンは顔料=微細な粒子である以上細さに限界があり、
現代においては如何にはっきり描画できるかの実用性が求められており、
擦れにくく極細線に限界があるということで条件に合わず。
つけペンはインクの保持が少量故に、長期筆記するには都度インクを付けねばならず面倒なのと
自然に線が擦れるというよりはインクを付け忘れてそのまま描画することによりインクがなくなり定期的に擦れがちで「自然」に擦れてくるとはちょっと違った風合いであったため候補から除外となりました。

選ぶのは日本製の 極細 万年筆

制作風景

もともと使っていたボールペンが業界内これ以上ないくらい極細のペンだったため
それに代わる極細さもペンを選ぶ条件でした。
万年筆は同じ極細(EF)規格でも海外製と日本製では太さが違います。
海外製はアルファベット、日本製は画数が多い漢字を書くため
より細く書けるようになっていると言われています。
この違いはそれぞれの 万年筆 を買って線の太さを確認しております。

私個人的には線の細さを求めていたので日本製の万年筆 EF規格を選ぶに至りました。

日本大手 万年筆 メーカーHP
セーラー万年筆
パイロットコーポレーション
プラチナ万年筆

安藤光の描く万年筆画の一部

国産の極細規格の万年筆でも特に細いのがパイロット社のカスタム74 EFでした。
これは筆記する紙、使用するインクにもよると思いますが、
例えば大手他社の同価格以上の万年筆と書き比べても圧倒的に細い線を引けたことと
同価格以下のパイロット含む大手社製万年筆の極細規格では線が太かったことが理由です。

おわりに

いかがでしたでしょうか。
私がペン画を描くために 万年筆 を選んだのかを解説しました。
まとめると私が選ぶ理由は・・・
・ボールペンより豊富な顔料インク
・付けペンより長時間インクを補充しなくとも描ける筆記性
・ある程度ペン先の向きを気にしなくても描ける
・適度に擦れて自然に濃淡が出る
・国産 万年筆 の極細さ
でした。

この機会に 万年筆 に興味を持っていただけたなら嬉しいです。
都内が中心ですが 万年筆 で描かれたペン画を展示する機会もありますので
是非機会がありましたらご来場いただけると嬉しいです。
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