初めての個展開催ガイド【会場探し~終了後まで】

人生で初めて個展を開くことを決意した時、
その瞬間から新しい表現のステージが始まります。

多くのアーティストにとって、
個展は自分の作品を直接人々に届ける貴重な場であり、
作家活動の大きな節目でもあります。

しかし、初めての経験だからこそ、どこから手をつけていいのかわからず、
不安が募ることも少なくありません。

本記事では、初めて個展を開催する方を対象に、
成功へ導くための基本的な流れとポイントを詳しく解説します。

会場選び、作品制作、告知方法、当日の過ごし方、そして終了後のフォローまで、
初めての個展で押さえておきたい情報を包括的にお伝えします。

これを読めば、安心して個展準備を進められることでしょう。

【関連記事】【初めてのグループ展】参加するためには?

個展開催までのロードマップ

時期やること
12~10か月前– 「個展をやる」と決意
– 展示のイメージ・点数・テーマをメモ
– 会場候補を調査開始
9~6か月前– 会場の下見・予約
– 予算と収支見積もり
– 必要作品点数から制作計画を立てる
5か月前– メインビジュアル(DMに使う作品)の選定・制作
– 展示構成の草案を作る
4か月前– タイトル・テーマ・ステートメントの仮決定
– DMデザインの検討開始
3~2か月前– DM完成・印刷手配(納品は2か月前目安)
-プレスリリース送付(任意)
-DM到着・配布開始
1か月前– ポートフォリオ・キャプション準備開始
– 設営道具・グッズの準備
– SNS宣伝スタート(進捗投稿も効果的)
1週間前– 作品梱包・搬入準備完了
– プロフィールパネル・キャプション印刷
– 名刺・芳名帳確認
前日– 搬入・設営(位置決めはメジャーで丁寧に)
– SNSで「明日から開催」告知
会期中– 在廊(できるだけ)
– 写真撮影・投稿
– 来場者との交流とメモ取り
最終日– 時間厳守で搬出
– 作品の返送や保管
終了後– 芳名帳をもとにお礼メール・SNS報告
– 売上確認・収支計算
– 改善点を記録

1. 個展開催の決意と構想

個展を開く一歩目は、何より「やる」と心に決めることです。

この決断がなければ、具体的な準備も進みません。

まずは、自分が発表したい作品群をイメージし、
どのようなメッセージや世界観を伝えたいのか、
テーマを固めていきましょう。

テーマ設定のコツは、自分の作品に共通する特徴や表現の方向性に注目することです。

例えば、「都市の風景」「自然との共生」「内面の葛藤」など、
作品を束ねるキーワードを見つけます。

その際、言葉で説明しづらければ、
スケッチや写真、簡単なメモに落とし込んでみると良いでしょう。

テーマは展示の軸となり、告知やDM制作にも役立ちます。また、
作品の点数や制作スケジュールを逆算しやすくなるため、
早めに固めておくことをおすすめします。


2. 会場を探す

個展の第一歩は、「どこでやるか」を決めること。会場には様々なタイプがあり、
それぞれ特徴とメリット・デメリットがあります。

貸しギャラリーは、一定の賃料を支払ってスペースを借りる形です。
自由度が高く、自分の好きなように展示ができますが、
広報・接客・会計まで基本的にすべて自分で行う必要があります。
販売や接客など代わりに代行してくれるところもあります。
その場合は売り上げから1~3割手数料として支払うことになります。
楽ではありますが場所代+売り上げ手数料を支払うことになり、黒字にするのはかなり厳しくなります。

一方、企画ギャラリーはギャラリー側が選考・招待した作家を展示するスタイルで、
賃料は不要ですが、売上の一部をギャラリーに支払う契約になります。

この貸しと企画の2つの業務形態があり、
国内には2つの形態を併せ持つギャラリーもたくさんあります。
将来、企画ギャラリーに取り扱われたいなら営業もかねてそこで個展をやるという選択もありです。

そのほか、市民ギャラリーや公共施設、
カフェギャラリーも選択肢として存在します。

これらは比較的安価に利用できる反面、
設営ルールが厳しかったり、営利活動不可(販売不可)だったり
集客力が弱かったりすることもあるため、
展示の目的に応じて選びましょう。

どのタイプの会場を選ぶにしても、
重要なのは「値段以上の価値がある」と思えるかどうか。

そして人気のあるギャラリーほど1年前から予約が埋まるため、
早めの行動がカギになります。

関連記事:【初個展】個展を開催するギャラリーの選び方

3. 個展の内容と作品を決める

個展で展示する作品の点数や内容は、
会場の広さやテーマに合わせてバランスよく構成することが重要です。

大作ばかり並べると鑑賞が疲れてしまう場合もあり、
小品を交えて展開することで来場者の興味を継続しやすくなります。

新作の制作計画は、展示日程から逆算して無理のないスケジュールを立てましょう。

制作途中の進捗をSNSで発信するのも、
ファン作りにつながるメリットがあります。

特に初めての個展では「完成させること」が何より大切なので、
完璧を目指しすぎず、自分の表現を大切に進めることを心がけてください。

展示作品にはそれぞれキャプション
(作品のタイトル、素材、制作年など)を用意し、
展示会場で鑑賞者が作品を深く理解できるようにします。

キャプションの作成も余裕をもって行いましょう。

関連記事:個展タイトルの決め方


4. DM(ダイレクトメール)の作成と配布

個展の準備において欠かせないのがDMの制作です。DMには、会場情報、日時、在廊予定日、作品画像、プロフィールなどを掲載します。サイズはハガキサイズが一般的で、印刷は外部の印刷業者に依頼するのが主流です。

枚数は、手配り・郵送・会場設置・街中設置を含めて合計1000枚前後が目安になります。

設置先にはギャラリー、画材屋、カフェ、美術系学校などが考えられます。

DMは開催の2か月前には手元に届いていると安心で、配布は開催の1か月~2週間前に行うのがベストです。

会場が遠方で近隣のギャラリーや店舗に設置のお願いに伺えない場合、
設置依頼の文面を同封してDMを店舗に送ります。

詳しくは以下の関連記事を参照
関連記事:個展DMの設置依頼方法【例文あり】


5. 宣伝方法あれこれ

DMを配るだけでなく、オンラインでの発信も重要です。SNS(X・Instagram・Facebookなど)は、画像と在廊日などの情報を添えて投稿すると効果的です。

定期的に進捗を投稿したり、カウントダウンをしたりすると注目されやすくなります。

Facebook広告は少額でも地域や興味で絞った配信が可能なので、ある程度慣れてきたら活用してみるのも良いでしょう。

SNSでの宣伝では、写真の質とキャッチコピーが集客を左右します。
見た人が「行ってみたい」と思うような魅力的な投稿を心がけましょう。

例えば
制作風景
素材の紹介
作品の紹介
こだわりポイント
展示や制作の裏話
など
ハッシュタグを工夫し、地域名や展覧会、
ジャンルを含めると検索からの流入が増えます。
場合によっては有料広告を活用するのも一つの方法です。

関連記事:絵画展覧会の告知方法、そのタイミングとは?


6. 展示備品の準備

展示のレイアウトは事前に紙に描いてイメージを固めておくと、
搬入・設営時にスムーズです。照明の位置や作品の高さ、
壁の利用方法も事前に確認しておきましょう。

作品の搬入時には傷がつかないよう十分に注意し、
搬出まで安全に保管する準備も大切です。

キャプションやプロフィールパネル、
芳名帳、名刺なども忘れず準備します。

展示グッズとして、
ポストカードや缶バッジ、
ミニ画集などを作っておくと、
収益や来場者の満足度向上に役立ちます。

釘やテープ、メジャーなどの設営用品はまとめておくと便利です。

会期中はできるだけ在廊し、
来場者と積極的に交流しましょう。

感想や質問を聞くことで、
自身の制作活動のヒントを得られます。

写真撮影やSNSへの投稿も忘れずに行い、
来場できなかった人への情報発信も欠かしません。

関連記事:【展覧会必須】作品キャプションの作り方


7. 搬入・設営・会期中の過ごし方

搬入前には、展示イメージを紙に描いておくと、現場での混乱を防げます。作品の中心が床から
約140~150cmになるように配置するのが基本です。

釘打ちや壁の使い方にルールがある場合は、必ず事前に確認しておきましょう。

会期中は、なるべく在廊し、お客様と直接会話を交わすことをおすすめします。会話を通して、自分では気づかなかった視点や感想を得られることも多く、今後の制作に生きてきます。

関連記事:【絵描き必見】展覧会中に在廊すべき4つの理由とメリット

また、
展示風景を写真に撮ったり、
SNSで発信したりすることで、展示の記録にもなり、
次の展示への信用にもつながります。

来場者数をカウントしたり、話した内容を簡単にメモしておくのもおすすめです。

関連記事:【描いた絵を売る】絵画展覧会での接客方法


8. 搬出・終了後のフォロー

最終日の搬出は時間厳守で行いましょう。
ギャラリーによっては閉館直後に完全撤収を求められる場合もありますので、
余裕を持った段取りを心がけてください。

展示が終わったら、SNSやホームページで展示報告を発信しましょう。
芳名帳をもとに、お礼のメッセージやメールを送ることも大切です。
展示の売上については、会場によっては1か月程度かかることもあるため、入金の確認も忘れずに。

最後に、今回の展示を通して得たことや改善点を振り返ってメモしておくと、
次回の個展準備が格段にスムーズになります。

関連記事:個展が終わったらやること


まとめ

初めての個展は、自分の表現を「世に出す」大きな一歩です。
不安もありますが、準備を一つ一つ進めていけば必ず形になります。

展示はただの発表の場ではなく、自分という作家のブランドを築く場所。
この記事を参考に、あなたらしい個展を実現してください。

誰かの心に、あなたの作品が届く日が必ず来ます。