目次
本記事では絵の値段の決め方や考え方を解説していきます。
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芸術活動する目標
・好きな絵を描いて収入だけで生活していきたい
・世界中の人に自分の絵を見てもらいたい
・美術史に名を残したい
・本の表紙など制作依頼やデザインの仕事で稼いでいきたい
などなど
あなたにとって画家とは何でしょうか?
目指す目標によって活動の方向性が変わっていきます。
このブログでは絵を売ってある程度収入を得たい、
赤字から脱したい方向けに書いています。
少しでもヒントになれば幸いです。
私は現在、全国で絵を描いて売っていますが
そのほかに会社員もやっています。
まだまだ絵を売っていくだけでは生活してはいけません。
(業界を知れば知るほど好きな絵を描いていくのみでは収入は得にくいです)
今後プロの作家としてやっていくなら
正当な値段で絵を売っていく経験も重要になるかと思います。
これから作家活動を始めていく方は
まずは街のギャラリーやレストラン、
公共施設などでの展示だと思います。
なのでギャラリーでの展示を想定して
百貨店の場合は割愛します。
絵の値段の決め方
よく時給換算する作家や自分が勝手に決めていいとよく聞きます。
が、実際はプロとしての信用を失う行為となる場合があります。
理由は自分の金銭感覚で値段をつけてしまうと
「プロとしての自覚がない」「趣味で絵を描いている」など
ギャラリーやコレクターさんに
遊び感覚で絵を描いていると思われてしまいます。
時給はあくまで給与計算の仕方でしかありません
イラストレーターやデザイナーだとかかった日数や時間などで料金が決まるのはわかります
依頼者がいてそれに沿ったものを納品するのが仕事だからです。
しかしながら画家は技術を売るわけではなく作ったものを売る小売業です。
世の中の商品の値段は作った人の時給計算ではなく生産者が勝手に決めているわけではありません。
絵の値段って何で決まる?
では商品の値段ってなにできまるのか?
それは需要と供給の関係で決まりますが
もっと掘り下げれば「評価」だと考えます。もちろんそれ以外にも様々な要因がありますが。
モノが市場に出回る前に試験や品評会があり、
その中で「評価」されて価格にも反映されます。
更にセリなどでも仕入れ業者が実物を見て「評価」し入札します。
画家も同じで絵を売っていく以上周囲から評価されます。
それは質の良い絵を制作できることはもちろん、
画家自身の態度や信用度、活動履歴や売り上げの数字、来場者数などです。
(画家自身ではなく画商が評価し価格を決める場合もあります)
活動していくにつれて経験が蓄積し、自分の業界の立ち位置がだんだんとわかってきます。
(例えば業界内ピラミッドを考えて自分がどの段にいるか)
作品の値付けも自分の立ち位置や作品の質から算出しますが、
経験が蓄積されれば値付け精度も上がって
より自分の最適価格が出せるようになっていきます。
値付けの基本
基本的には日本国内では号数×〇万が慣例です
これから作家活動を始める方は
号=5000円前後が多いようです
額を付ける場合はさらに額代を上乗せします。
例えば
号単価5000円×3号+額代5000円=20000円
といった感じです。
よく売れる小さい作品は割高に、滅多に売れない大きい作品は割安にするのが慣例です。
マージンとは
ギャラリーでの展示の場合の多くは、
販売価格の〇割といったマージンが取られます。
なので・・・
マージン4割の場合
作家の取り分は売り上げ6割の12000円 そこから額代5000円を引くと7000円・・・
例えば私がギャラリーで展示する場合マージン3割・4割のところが多いので
マージン4割に固定します。4割なら0.4の逆数2.5を額代に掛けます(10/4=2.5)
号単価5000円×3号+額代5000円×マージン逆数2.5=27500円
となります。
基本的にはこの計算で算出します
売れっ子になると、この号単価が1万とか2万に上がっていくわけです。
ちなみにマージン2割のところで展示するから
マージン4割の価格で一度展示した絵を
値下げすることはありません。
作家によっては手数料によって変えたり「時価」だからと展示場所によって変える方もいるかもしれません。
A会場で20000円で買ったのに、
後日、B会場で同じサイズの絵を見かけたら15000円だったなんて
買った側からすると損した気分になりますよね。
価格をころころ変えていてはその会場のギャラリーオーナーからもお客様からも
作家としての信用を失う行為となります。
一番大切にしなきゃいけないのは絵を買ってくれたお客様だからです。
そんなお客様に「なんだか損したなぁ」と思わせては絶対にいけません。
絵の値段の決め方【大作の場合】
では大作(30号や60号等)はどうなのか
この計算だと大作の場合
現実的に売れないほど高額になってしまいます。
作家さんによって違いますが
〇号以上は割引にすることが多いです
逆に小さい作品は割高になります。
例えば10号以上は2割引き、20号以上は4割引きなど
計算はこうなります(号単価5000円・10号の場合)
(号単価5000円×10号)×0.8+額代10000円×マージン逆数2.5=65000円
値上げするタイミング
では値上げするタイミングはいつなのか
・年1回〇割ずつ上げていく
・「この価格でこんな絵を描いたら、ほぼ必ず売れる」という確信が持てた時
・雑誌で紹介されたり・賞を受賞したタイミング
・生産速度より売れていく速度が速くなった時
など
タイミングは作家によって様々です。
画家として経験を積んでいくと
【あなたにとっての売れる絵】というのが
見えてきます。
あなたにとっての売れる絵
私の場合、ポートフォリオの作品に売れたら赤シールを貼っています。
売れたか手元にある絵なのか分からなくなっていくのでという理由もありますが、
「このモチーフは他の絵より良く売れている」など
売れる作品傾向を見るためでもあります。
さらに作品ごとの基本情報(サイズや制作年など)、展示歴や価格改訂履歴など
リストを作ってデータ上でも管理しています。
【作品リストの作り方はこちら】
そうやって記録していくことで
「自分にとっての売れる絵」が分かってきます。
それが見つかれば高くても売れる
質の高い作品を描けるように
努力していくだけです。
そうすることで自信が付き、
この値段で確実に売れるという確信が持てるようになると思います。
私はそうなった年に〇割値上げしています。
売れやすい価格とは
まず会場によって客層が変わります
カフェギャラリーや街のギャラリーでは2.3万くらいの価格が妥当ですが
百貨店などでは4万前後が売れやすいようです。
先ほどサイズにより値段は固定という話をしました。
会場によって売れやすい値段が変わり、それに合わせるなら
値上げするか
サイズを変え、売れやすい価格に合わせます。
大きくて高額な絵ばかりでは売れません。
例えば
20号・30号くらいの大作を1枚
10号くらい2~3枚
0号~3号・SMなど小品を10枚
など大作を頂点にしたピラミッド型の作品構成を考えます。
もちろん展示スペースによって作品サイズや数を調整します。
実質大作はアピール用です
実際家の壁には大きい絵は飾れません
小さい絵が好まれます。
なので小作品をいっぱい用意することで
購入される確率を上げていきます。
展覧会後、売れ残ったら・・・
絵の値段は基本的に値下げはしません
私も駆け出しの頃は売れ残った絵を焦って値下げしてました。
ただ会場によって値段が変わることは信用を失うことだと気づき
値段は固定にしました。
あなたが新作を発表したとき、
真っ先に買ってくれるお客様こそが、
最も大切にしなくてはならない一番のお客様です。
そういった方たちに損をさせては絶対にいけません。
むしろ積極的にひいきして得をしてもらうべきです。
初披露目で割引にするとか、
期間限定や数量限定で割引にし、
最初に買った人が得をするように売っていきます。
買った人限定でミニ色紙原画プレゼントもよいかもしれません
上記のようにサイズで価格を決めた場合
額代や使う画材にもよりますが同じサイズは同じ値段になります
そうするとすでにご購入いただいた作品と同一サイズの絵が値上げされれば、
先に買っていたお客様は値上げされた分だけ得をすることとなります。
なので売れ残って手元にある絵は
あなたの活動度合いによって値段が上がっていくことになります。
安売りは厳禁
絵は「安くなったから買う」ということはあまりありません。
興味のない人はタダでもいりません。
それを欲しいと思ってくれる人に出会うために
いろいろな場所で展示活動をしていくことになります。
買う気のある人からの多少の値下げ交渉には応じてもいいかもしれませんが、
少なくとも表示価格は一切下げない方がいいと思います。
実績を積み上げ単価を上げていくことこそが、
作品を買ってくださった方々への恩返しとなります。
高くても売れる絵を目指す
作家活動をしていると
「自分が好きで描いた絵なんだからお金を取るなんてとんでもない。」
「額代が相殺できればOK」
「自分の絵に自信がなく値段を安くしてしまう」
「芸術はお金じゃない」
と言う作家にも出会います
もちろん冒頭でも書いた通り目指すところはそれぞれです。
しかし
絵を仕事とするならそもそも
「高くても売れる絵が描ける」
これができないと仕事になりません。
安売りすることは自己満足の範疇に収まらず、
業界自体の衰退にも繋がります。
作家自身も出展費や画材代ばかりがかかり、
活動を続けていくことすら出来なくなっていきます。
応援していた作家が活動を続けられなくなって、
辞めてしまった時のコレクターさんの気持ちを想像してみてください。
公な場所で絵を売っている以上はプロとしての責任が伴います。
買ってくれた、応援してくれた方々のためにも、描き続け活動していくためにも
高くても絵が売れるプロの作家を目指していきましょう。