絵の値段の決め方【画家になるために】

本記事では芸術業界を紹介しつつ絵の値段の決め方や考え方を解説していきます。

【関連記事】

芸術活動する目標

・好きな絵を描いて収入だけで生活していきたい
・世界中の人に自分の絵を見てもらいたい
・美術史に名を残したい
・本の表紙など制作依頼やデザインの仕事で稼いでいきたい
などなど
あなたにとって画家とは何でしょうか?

目指す目標によって活動の方向性が変わっていきます。

このブログでは絵を売ってある程度収入を得たい
赤字から脱したい方向けに書いています。
少しでもヒントになれば幸いです。

私は現在、全国で絵を描いて売っていますが
そのほかに会社員もやっています。
まだまだ絵を売っていくだけでは生活してはいけません。
(業界を知れば知るほど好きな絵を描いていくのみでは収入は得にくいです)

今後プロの作家としてやっていくなら
正当な値段で絵を売っていく経験も重要になるかと思います。

これから作家活動を始めていく方は
まずは街のギャラリーやレストラン、
公共施設などでの展示だと思います。

なのでギャラリーでの展示を想定して
百貨店の場合は割愛します。

絵の値段の決め方

f:id:nyar125:20200820121437j:plain

よく時給換算自分が勝手に決めていいとよく聞きます。
が、実際はプロとしての信用を失う行為となる場合があります。

理由は自分の金銭感覚で値段をつけてしまうと
「プロとしての自覚がない」「趣味で絵を描いている」など
ギャラリーやコレクターさんに
遊び感覚で絵を描いていると思われてしまいます。

基本的には日本国内では号数×〇万が慣例です

これから作家活動を始める方は
号=5000円前後が多いようです
額を付ける場合はさらに額代を上乗せします。

例えば

号単価5000円×3号+額代5000円=20000円

といった感じです。

マージンとは

f:id:nyar125:20200820100456j:plain

ギャラリーでの展示の場合の多くは、
販売価格の〇割といったマージンが取られます。
なので・・・

マージン4割の場合

作家の取り分は売り上げ6割の12000円 そこから額代5000円を引くと7000円・・・

例えば私がギャラリーで展示する場合マージン3割・4割のところが多いので
マージン4割に固定します。4割なら0.4の逆数2.5を額代に掛けます(10/4=2.5)

号単価5000円×3号+額代5000円×マージン逆数2.5=27500円

となります。

基本的にはこの計算で算出します

売れっ子になると、この号単価が1万とか2万に上がっていくわけです。

ちなみにマージン2割のところで展示するから
マージン4割の価格で一度展示した絵を
値下げすることはありません。

A会場で20000円で買ったのに、
後日、B会場で同じサイズの絵を見かけたら15000円だったなんて
買った側からすると損した気分になりますよね。

絵の値段の決め方【大作の場合】

f:id:nyar125:20200821110201j:plain

では大作(30号や60号等)はどうなのか

この計算だと大作の場合
現実的に売れないほど高額になってしまいます。

作家さんによって違いますが
〇号以上は割引にすることが多いです
逆に小さい作品は割高になります。

例えば10号以上は2割引き、20号以上は4割引きなど

計算はこうなります(号単価5000円・10号の場合)

(号単価5000円×10号)×0.8+額代10000円×マージン逆数2.5=65000円

値上げするタイミング

では値上げするタイミングはいつなのか

・年1回〇割ずつ上げていく
・「この価格でこんな絵を描いたら、ほぼ必ず売れる」という確信が持てた時
・雑誌で紹介されたり・賞を受賞したタイミング
・生産速度より売れていく速度が速くなった時

など

タイミングは作家によって様々です。

画家として経験を積んでいくと
【あなたにとっての売れる絵】というのが
見えてきます。

私の場合、ポートフォリオの作品に売れたら赤シールを貼っています。
売れたか手元にある絵なのか分からなくなっていくのでという理由もありますが、
「このモチーフは他の絵より良く売れている」など
売れる作品傾向を見るためでもあります。

そうやって記録していくことで
「自分にとっての売れる絵」が分かってきます

それが見つかれば高くても売れる
質の高い作品を描けるように
努力していくだけです。

そうすることで自信が付き、
この値段で確実に売れるという確信が持てるようになると思います。
私はそうなった年に〇割値上げしています。

売れやすい価格とは

個展で5枚セットで売れた作品

まず会場によって客層が変わります

カフェギャラリーや街のギャラリーでは2.3万くらいの価格が妥当ですが
百貨店などでは4万前後が売れやすいようです。

先ほどサイズにより値段は固定という話をしました。
会場によって売れやすい値段が変わり、それに合わせるなら
値上げするか
サイズを変え、売れやすい価格に合わせます。
大きくて高額な絵ばかりでは売れません。

例えば

20号・30号くらいの大作を1枚
10号くらい2~3枚
0号~3号・SMなど小品を10枚

など大作を頂点にしたピラミッド型の作品構成を考えます。
もちろん展示スペースによって作品サイズや数を調整します。

大作はアピール用です
実際家の壁には大きい絵は飾れません
小さい絵が好まれます。
なので小作品をいっぱい用意することで
購入される確率を上げていきます。

展覧会後、売れ残ったら・・・

f:id:nyar125:20200819140822j:plain

絵の値段は基本的に値下げはしません
私も駆け出しの頃は売れ残った絵を焦って値下げしてました。
ただ会場によって値段が変わることは信用を失うことだと気づき
値段は固定にしました

あなたが新作を発表したとき、
真っ先に買ってくれるお客様こそが、
最も大切にしなくてはならない一番のお客様です。
そういった方たちに損をさせては絶対にいけません。
むしろ積極的にひいきして得をしてもらうべきです。

初披露目で割引にするとか、
期間限定や数量限定で割引にし、
最初に買った人が得をするように売っていきます。
買った人限定でミニ色紙原画プレゼントもよいかもしれません

上記のようにサイズで価格を決めた場合
額代や使う画材にもよりますが同じサイズは同じ値段になります
そうするとすでにご購入いただいた作品と同一サイズの絵が値上げされれば、
先に買っていたお客様は値上げされた分だけ得をすることとなります。

なので売れ残って手元にある絵は
あなたの活動度合いによって値段が上がっていくことになります。

絵は「安くなったから買う」ということはあまりありません。
興味のない人はタダでもいりません。
それを欲しいと思ってくれる人に出会うために
いろいろな場所で展示活動をしていくことになります。

買う気のある人からの多少の値下げ交渉には応じてもいいかもしれませんが、
少なくとも表示価格は一切下げない方がいいと思います。
実績を積み上げ単価を上げていくことこそが、
作品を買ってくださった方々への恩返しとなります。

高くても売れる絵を目指す

f:id:nyar125:20200730142921j:plain

作家活動をしていると
「自分が好きで描いた絵なんだからお金を取るなんてとんでもない。」
「額代が相殺できればOK」
「自分の絵に自信がなく値段を安くしてしまう」
「芸術はお金じゃない」
と言う作家にも出会います
もちろん冒頭でも書いた通り目指すところはそれぞれです。

しかし
絵を仕事とするならそもそも
「高くても売れる絵が描ける」
これができないと仕事になりません。
安売りすることは自己満足の範疇に収まらず、
業界自体の衰退にも繋がります。
作家自身も出展費や画材代ばかりがかかり、
活動を続けていくことすら出来なくなっていきます。

応援していた作家が活動を続けられなくなって、
辞めてしまった時のコレクターさんの気持ちを想像してみてください。

公な場所で絵を売っている以上はプロとしての責任が伴います。
買ってくれ応援してくれた方々のためにも、描き続け活動していくためにも
高くても絵が売れるプロの作家を目指していきましょう。

関連記事:【画家で生きていく】売り絵と売れる絵の違いとは