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「自分の描いた絵、いくらで売ればいいの?」
これは作家活動を始めたばかりの人が必ずぶつかる壁のひとつ。
本記事では、実体験に基づき「絵の値段の決め方」を初心者にも分かりやすく解説します。
【関連記事】
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そもそも、あなたは何を目指している?
画家としての活動目標は人それぞれ:
・好きな絵を描いて生活費を稼ぎたい
・世界中の人に作品を見てもらいたい
・美術史に名を残したい
・書籍の表紙や依頼制作で収入を得たい
あなたにとって「画家」とは、どんな存在でしょうか?
この問いの答えによって、作品販売の戦略も大きく変わってきます。
この記事は、絵で赤字を脱し、少しでも収益化したい方を対象に書いています。
自分の絵に値段をつけることに悩んでいるなら、ぜひ読み進めてください。
絵の価格設定、まずは結論:
「あなたの絵は“評価”によって値段が決まる」
よくあるNG価格設定
「時給換算で考える」
「自分が納得する価格で勝手に決める」
……これ、意外と落とし穴です。
確かにイラストレーターやデザイナーなど、クライアントワークでは時間=報酬の計算が妥当。
でも画家は小売業です。
あなたが売るのは「時間」ではなく「完成された作品」。
つまり、需要と供給、もっと言えば「作品の評価」が値段を決めます。
絵の価値を決める「評価」とは?

- 絵そのものの完成度
- 作家としての信用(過去の販売実績、展示歴、受賞歴など)
- 作風の一貫性やプロ意識
- コレクターやギャラリーからの評価
絵の市場価格は、こうした複合的な「評価」によって形成されます。
ギャラリーや画商が値付けをするケースもありますが、
セルフマネジメントをする場合は
自分の立ち位置を客観視しながら価格設定をしていく必要があります。
日本における絵の価格設定の基本:号数×単価
国内では「号数×単価」が一般的な価格設定法です。
はじめは号あたり5,000円前後が基準になります。
例:
- 3号作品(5,000円×3)+ 額代5,000円 = 20,000円
また、小さい作品は割高に、大きい作品は割安にするのが慣例です。
絵の値段って何で決まる?
では商品の値段ってなにで決まるのか?
それは需要と供給の関係で決まりますが
もっと掘り下げれば「評価」だと考えます。
もちろんそれ以外にも様々な要因がありますが。
モノが市場に出回る前に試験や品評会があり、
その中で「評価」されて価格にも反映されます。
更にセリなどでも仕入れ業者が実物を見て「評価」し入札します。
画家も同じで絵を売っていく以上周囲から評価されます。
それは質の良い絵を制作できることはもちろん、
画家自身の態度や信用度、活動履歴や売り上げの数字、来場者数などです。
(画家自身ではなく画商が評価し価格を決める場合もあります)
活動していくにつれて経験が蓄積し、自分の業界の立ち位置がだんだんとわかってきます。
(例えば業界内ピラミッドを考えて自分がどの段にいるか)
作品の値付けも自分の立ち位置や作品の質から算出しますが、
経験が蓄積されれば値付け精度も上がって
より自分の最適価格が出せるようになっていきます。
ギャラリー販売時のマージンに注意!

ギャラリーで販売すると販売価格のうち、ギャラリーに3〜5割のマージンが発生します。
そのため価格設定時には、逆算しておかないと手取りが想像以上に少なくなります。
例:
- 3号作品/号単価5,000円/額代5,000円/マージン4割
- → マージン逆数=2.5
- → 最終販売価格=(15,000円+5,000円×2.5)=27,500円
税抜き価格には端数を出さないのが鉄則。
1円の誤差がトラブルになるケースもあるため、管理しやすい価格設定を心がけましょう。
端数が出ることで起こる「1円誤差」の原因
税抜き価格は端数を出さないように設定します。(税込みピッタリ価格よりも税金分上乗せ)
例えば30,000円とするよりも33,000円とした方が会計する側の税金計算が楽になりますし、
自分も管理するのが楽です。
それと税抜き価格に端数が出ると、
レジによっては手数料や返金計算で1円の誤差が出る可能性があります。
場合によってはお客様とのトラブルになることもあり得ます。
たとえば:
税抜き価格:¥999
消費税率:10%(0.1)
→ ¥999 × 0.1 = ¥99.9(税額)
これをレジが四捨五入すれば税込 ¥1099
切り捨てすれば税込 ¥1098
→ ここで1円のズレが出ます。
ギャラリーや店舗によってレジや会計システムのルールが異なる
・店舗Aのレジは「切り捨て」ルール
・店舗Bのレジは「四捨五入」
・ネットショップでは「すべて合計して最後に四捨五入」
など。この差で、1円〜数円の誤差が生じることがあります。
税抜き価格に端数が出ると、
税計算・手数料計算・ポイント計算などで、
1円前後の誤差が生じることは
“普通にあり得る”話です。
値段は固定、会場ごとに変えない
展示会ごとに絵の値段を上下させるのは信用を失う行為です。
Aギャラリーで2万円で売られた作品が、Bギャラリーで1.5万円だったら…
購入者は損を感じてしまいますよね。
価格の一貫性=作家としての信用です。
一度決めた価格は、展示場所がどこであれ変えないようにしましょう。
大作(10号以上)の価格設定:割引が基本

サイズが大きくなると、単純計算では現実的に売れない価格になります。
そのため、10号以上は割引を適用するケースが一般的です。
例:10号作品/号単価5,000円/2割引/額代10,000円/マージン逆数2.5
→ (5,000×10×0.8)+(10,000×2.5)=65,000円
値上げのタイミングは?
- 年1回、計画的に値上げ
- 「この価格なら確実に売れる」実感がある
- 賞の受賞やメディア露出などで評価が上がった
- 作品の売れ行きが制作スピードを上回ってきた
自分にとっての「売れる絵」が明確になった時が、値上げのサインです。
あなたにとっての売れる絵
私の場合、ポートフォリオの作品に売れたら赤シールを貼っています。
売れたか手元にある絵なのか分からなくなっていくのでという理由もありますが、
「このモチーフは他の絵より良く売れている」など
売れる作品傾向を見るためでもあります。
さらに作品ごとの基本情報(サイズや制作年など)、展示歴や価格改訂履歴など
リストを作ってデータ上でも管理しています。
【作品リストの作り方はこちら】
そうやって記録していくことで
「自分にとっての売れる絵」が分かってきます。
それが見つかれば高くても売れる
質の高い作品を描けるように
努力していくだけです。
そうすることで自信が付き、
この値段で確実に売れるという確信が持てるようになると思います。
私はそうなった年に〇割値上げしています。
売れやすい価格帯と展示構成

会場によって「売れやすい価格帯」は変わります。
- 街のギャラリーやカフェ:1〜3万円台
- 百貨店:5万円~(※会場の性格による)
価格帯に合わせたサイズ展開も工夫しましょう。
例:
- 20号〜30号(アピール用・高額)
- 10号数枚(中価格帯)
- 小品(0〜3号、SMなど)10枚以上
ピラミッド構成を意識することで、購入機会を広げられます。
展覧会後、売れ残ったら・・・

絵の値段は基本的に値下げはしません
私も駆け出しの頃は売れ残った絵を焦って値下げしてました。
ただ会場によって値段が変わることは信用を失うことだと気づき
値段は固定にしました。
あなたが新作を発表したとき、
真っ先に買ってくれるお客様こそが、
最も大切にしなくてはならない一番のお客様です。
そういった方たちに損をさせては絶対にいけません。
むしろ積極的にひいきして得をしてもらうべきです。
初披露目で割引にするとか、
期間限定や数量限定で割引にし、
最初に買った人が得をするように売っていきます。
買った人限定でミニ色紙原画プレゼントもよいかもしれません
上記のようにサイズで価格を決めた場合
額代や使う画材にもよりますが同じサイズは同じ値段になります
そうするとすでにご購入いただいた作品と同一サイズの絵が値上げされれば、
先に買っていたお客様は値上げされた分だけ得をすることとなります。
なので売れ残って手元にある絵は
あなたの活動度合いによって値段が上がっていくことになります。
安売りは厳禁
「安いから買う」ではなく、「欲しいから買う」のが絵です。
安売りすると作家も業界も疲弊します。
継続的に活動するには、高くても売れる作品づくりが欠かせません。
高くても売れる絵を目指す

作家活動をしていると
「自分が好きで描いた絵なんだからお金を取るなんてとんでもない。」
「額代が相殺できればOK」
「自分の絵に自信がなく値段を安くしてしまう」
「芸術はお金じゃない」
と言う作家にも出会います
もちろん冒頭でも書いた通り目指すところはそれぞれです。
しかし
絵を仕事とするならそもそも
「高くても売れる絵が描ける」
これができないと仕事になりません。
安売りすることは自己満足の範疇に収まらず、
業界自体の衰退にも繋がります。
作家自身も出展費や画材代ばかりがかかり、
活動を続けていくことすら出来なくなっていきます。
応援していた作家が活動を続けられなくなって、
辞めてしまった時のコレクターさんの気持ちを想像してみてください。
公な場所で絵を売っている以上はプロとしての責任が伴います。
買ってくれた、応援してくれた方々のためにも、描き続け活動していくためにも
高くても絵が売れるプロの作家を目指していきましょう。