こんにちは。ペン画家として全国で展示活動をしている安藤光(あんどうひかる)と申します。
今回は作品が完成したあと、展示・販売に至るまで何をするのか。その工程を解説していきたいと思います。
【絵が描き終わったらすること】
サインを入れる
スキャン・写真撮影
画面保護(スプレーニス)
共シールを貼る
額装
黄袋・差し箱を作る
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サイン
作品が完成したらサインを入れます。
表に入れる方もいますが私の絵は余白がないので基本、裏に入れます。
必ず表に入れなきゃダメというわけでもありません。
私の場合はタイトル(制作年を兼ねる)、作家名を書きます。
アルファベットで書く方もいますが、漢字のほうが書ける人口が少なく偽造されにくいので
そのまま漢字で書いています。
洋画の場合は漢字は画数が多く、筆で書きにくかったりするので
アルファベットという方も多いようです。
タイトル、作家名以外にも制作年、素材、サイズなどの情報も書く作家もいます。
結局は作家それぞれです。
ただあまり情報過多なのも後々不利になる場合があるので私はシンプルにしてます。
サインを入れる際に気を付けること
・サインは耐久性のある画材で書く
揮発性の油性ペンや染料画材で書くと経年劣化で色が褪せてきます。
顔料インクやアクリル絵の具、墨など長く持つ画材を用いましょう。
・天地の準じたサインを書く
作品とサインが上下逆だと紛らわしく
作家本人でないと天地の判断がしにくいので天地に合わせてサインを入れましょう。
実際に天地が逆に展示されていた作品もあります。
・誰が見てもわかりやすい字を書く
記号など読めない字は誰のサインかそもそも判別できません。
無名作家の場合はそもそも何のマークなのかわからない場合もあります。
サインを入れる意味・役割
サインを入れる意味には以下のようなものがあります。
・作品の価値の保証
・偽造防止
など作家本人が描いたという保証の為なんです。
手元を離れても確実に誰が描いたか分かるようにしておくことは作家本人の最低限の責任なのです。
スキャン・写真撮影
作品が描き終わったらデータ化するために(私の場合は)スキャンをします。スキャンできないような大きなサイズは専門業者に写真撮影やスキャンを依頼したりします。
大きすぎる絵は画像データ化するのにお金が高額になるので私はA2までのサイズを描くことが多いです。
コンビニでスキャンできるサイズがA3までなのでA2の場合は2枚スキャンしてPCでうまくつなげる作業をします。
展覧会に出す際も画像データ提出を求められることも多くなってきたので、記録や将来グッズ作成のためにも高精度な画像データは残しておくのをお勧めします。
画面保護

作品が完成して(私の場合は)額に入れる手前に表面にスプレーニスを拭きます。
これは色褪せやほこりから守る画面保護用のスプレーです。販売する以上色褪せはクレームにもなりかねません。ギャラリーやお客様に迷惑をかけるので最低限耐UVのニスを塗ります。
液状のものも売っていて油絵やアクリル絵は刷毛で塗ったりもします。
リキテックスやホルベイン、ツヤあり・なし、アクリル絵の具用、鉛筆画用など専用のものがあります。画材に合ったニスを使いましょう。
私は主にこれを使っています(顔料インク+ペンの場合)
※スプレーニスの耐UV効果も約2年ほどだそうです。
洋画の場合、定期的に除去して塗り直すかちゃんとアクリル額に入れる事をおすすめします。ペン画や水彩画はもう塗りなおすことができないので耐光性のある画材を使い、さらに額に入れておくのが理想です。
共シール

共(とも)シールとは日本画の額装された作品に用いられるその作家が描いた証明みたいなものです。洋画は購入すると作品証明書が別途ついてきたりしますが、
最近では洋画作品でも作品裏、額の裏に共シールを付ける事も多くなってきました。
実際百貨店に出展したときはペン画でも共シールは必須でした。
お客様としても裏に添付されてた方が喜ばれるようです。
作品に落款(+サイン)と額の裏に共シールの内容がそろっていることで本物と判断されます。
私の場合は作品裏にサインを入れていますので作品裏に共シール、額の裏に共シールを貼っています。
この作品と額裏の2枚貼ることから「共」シールと言われています。
共シールの内容
共シールは様式や記載内容は特に決まっていません。
作家名、落款、タイトルが最低限記載される情報のようです。作家本人が証明するものなので全部直筆で書きます。
落款ははんこ屋さんで作ると同じものが作れるので篆刻(てんこく)セットを買い、自分で彫りました。
紙は名刺サイズを使っていますが、サイズや素材は作家それぞれのようです。
日本画だったら和紙の余りとか、使っている画材の余りなどが使われたりします。




作品裏にはそのまま糊付けします
額装

額装は額屋さんにお願いする方もいますが、
私の場合は、額とマット紙は注文して自宅で額装します。
プロに任せるのもいいですが、自分の作品の額装がどうなっているのか
把握・経験のためにも一度自分で額装してみるのをお勧めします。
額の選び方はこちら
それと自分で額を買ったときは自分で紐を結ばなくてはなりません。
飾ったときに額から紐がはみ出たり、
壁に掛けたら落下とならないようしっかり結び方は覚えましょう。
結び目は真ん中にならない様に(左右どちらかになるよう)たるまない様に結びます。
紐の真ん中をフックに掛けるので結び目が真ん中にあると邪魔になりやすいからです。
共シール貼り付け

額の裏に共シールを透明なカバーを付けて4辺をテープで固定します。
一回張り付けると交換は困難なため、もう額の中身を交換する予定がない場合(売れたとき等)に貼り付けます。
このカバーはプラバンやアクリル板をあてがってテープで固定する作家もいれば、共シール本体をラミネートして貼っている方もいます。
私はトレーディングカードなどを入れるスリーブという透明な袋に入れてテープで4辺を止めています。
黄袋
黄袋とはウコンの布で作られた袋のことでパネル・額装した作品を箱に直に入れると傷が付いたりするのでいったん入れる袋の事です。最近では必ずしも「ウコンで染めた布」じゃなくてもOK!です。
詳しくはこちらで解説しています。
差し箱

額に付属してきたかぶせ箱を差し箱に改造して使っています。
かぶせ箱や差し箱についてはこちらで解説しています。
仕上に差し箱に作品情報を記載したラベルを貼ります。
ラベルはこちらで解説している作品リストを印刷して貼っています。

ラベルがあると搬入出を自分以外の人にやってもらう場合にわかりやすいですし、自分でも管理しやすいのでオススメです。※作家名も入っているとなお良いですb
今回使用した商品一覧【Amazonリンク】
篆刻(てんこく)セット
名刺用紙
グリーンテープ
ウコンの布
おわりに
こんな感じで作品が描き終わって箱に入れるまでを解説しました。
このほかに作品リストにタイトルやサイズ、制作年など情報を記入、
ポートフォリオに作品追加などPC作業があります。
絵を描いてるばかりでなくこんな事務作業もあるのです。
ですがこれもお客さんに喜んでもらうためや
自分が作った作品を責任をもって管理する、プロの仕事なんです。
これから画家を目指す方、今、活動中の方にも助けになれば幸いです。
それではまた!