目次
絵を見に来た人を遠ざける「在廊者のふるまい」とは?

個展やグループ展など、
自分の作品が展示される場で在廊することは、
作家にとって貴重な時間です。
自分の作品を見てくれる人の反応を直接見られ、
時には言葉も交わせる。まさに一期一会の出会いが生まれる時間。
…なのですが、それゆえに気をつけるべき点も多々あります。
来場者とのコミュニケーションで悪気なくやってしまいがちな
「やってはいけないこと」。それらを知らずにやってしまうと、
せっかくの接点がすれ違いになり、
最悪の場合は「なんとなく居心地が悪かったから…」と、
購入どころか早々に帰られてしまうことも。
本記事では、
在廊時の作家が気をつけるべき接客マナーやNG行動を、
リアルな体験と共に整理します。
関連記事:【描いた絵を売る】絵画展覧会での接客方法
【これだけできれば大丈夫】すぐに実践できる接客の基本とは?
1. 「お部屋に1点いかがですか?」と購入を勧めない
もっともありがちなNGがこれです。
来場者に対し、絵の購入を勧めてしまうこと。
美術館とは違い、ギャラリーは販売を前提とした場です。
だからといって、来た人すべてが買う目的を持っているわけではありません。
むしろ多くは「なんとなく面白そうだから」「たまたま通りがかって」など、気軽な動機です。
そこにいきなり販売トークをかぶせると、「売り込みか…」と一気に警戒されます。
代わりにどうする?
おすすめは、「作品について聞かれたら答える」スタンス。
向こうから話しかけてくれたら、
その中で技法や考えていることについてを伝える。
そうすれば、売り込まれている印象にはなりません。
私は、ほかにも最初に声をかける一言を決めておくようにしています
「この作品はインク一色で万年筆で書いているんです」
「何かをイメージさせようとする脳にあらがって無心で描いています」
など
相手が買いたいと思っているなら、
こちらが焦らなくても向こうから聞いてくれます。
2. 作家同士で内輪話に夢中にならない

在廊中、同じ展示に出している作家仲間や友人が来てくれることもあります。
それ自体は嬉しいことです。しかし、その場で盛り上がりすぎてしまうと危険。
ギャラリーの中に「入ってはいけない空気」が発生します。
「なんだか入っていっていいのかわからない…」
「視線を感じて落ち着かない」
「完全に内輪ノリだな…」
と感じたら、ほとんどの一般客は入らずに素通りします。
見知らぬ来場者優先の姿勢を
在廊中の基本は、「来場者ファースト」。
知人や作家仲間との会話は、来場者がいないとき、
または外で軽く済ませるのがスマートです。
たとえ相手が気心知れた人でも
「ちょっと失礼」
とスッと切り替えることで、空間全体が開かれた場になります。
3. 来場者のあとをずっとついてまわらない
これもよくやってしまいがちです。
来場者に作品を見てもらいたいという気持ちから、
ずっとついてまわったり、解説を始めたり。
…これは要注意。
相手が「一人でじっくり見たい」タイプだった場合、これはかなりのプレッシャーになります。特に、気まずくなって早足で出ていってしまう人もいます。
自由に見せる空気を作る
まずは入口で「こんにちは」「ごゆっくりどうぞ」と軽く挨拶だけ。
あとは作品を見ている様子を見守る。向こうから話しかけられたら、そこで初めて一歩近づけば十分です。
立って見守る場合は会場の中心部文化鑑賞者の斜め後ろに位置取ります。
ほかにも公開制作して声をかけられたら対応するのもありでしょう。
解説やトークは、相手が望んでから。
見た人にとって、静かに対話するように作品を味わう時間こそが贅沢なのです。
4. 作品や展示の「わかりにくさ」を弁解しない
「これはちょっと難解でして…」
「自分でも何描いてるかよくわからないんですが…」
こういうセリフ、つい口にしていませんか?
冗談のつもりでも、受け取る側は戸惑います。
「え、じゃあ見ても意味ないのかな?」と感じてしまうのです。
作家の迷いは見せない方がよい
どんな表現であっても、作品は自分の一部であり、
来場者はそれを感じ取りに来ています。
そこに作者自身が「否定気味」な姿勢を見せると、
受け手はどう反応していいかわからなくなります。
難解かどうかは相手が決めること。
説明しすぎず、誠実な言葉を少し添えるくらいがちょうどよいです。
5. 写真撮影を許可しているなら、「撮っていいですよ」と促す

最近では、展示の雰囲気をSNSにアップする来場者も多く、
撮影OKの展示は増えています。
しかし、無言のままだと「撮っていいのかどうかわからない」と躊躇されがち。
SNSでの拡散は来場者による立派な応援
もし撮影OKなら、軽く「撮っていただいて大丈夫ですよ」と声をかけるだけで安心感が生まれます。
逆にNGの場合は、
「申し訳ないのですが、撮影はご遠慮いただいています」ときちんと伝えましょう。
撮影可否が不明確なままだと、トラブルの元になります。
6. 価格表を出し忘れない/わかりにくい表示は避ける

「販売もしてます」と言っておきながら、
価格表が置かれていない、もしくは分かりづらい場所にある。
これは地味に致命的です。
「聞きづらいし、まあいいや…」と諦める来場者は意外と多い。
価格表は「見やすいけど圧がない」場所に
おすすめは、会場の隅のテーブルや受付付近に価格表を設置する方法。
「ご自由にご覧ください」とひとこと添えておくと、売り込み感もなく安心です。
7. 長時間無言で立っている/無表情で座っている
作家として、来場者を圧迫しないよう控えめに…と意識しすぎた結果、
むしろ「居心地が悪い空気」になっているパターンもあります。
雰囲気は「居酒屋の店員」くらいでちょうどいい
満面の笑顔を振りまく必要はありません。でも、軽く会釈したり、にこっと笑うくらいで場の空気はだいぶ柔らかくなります。
「あの人、なんか怖かったね」と言われるより、「あの人、話しかけやすそうだったな」の方がチャンスは確実に増えます。
まとめ:在廊中は「空気を読む力」が試される時間
在廊中のふるまいは、すべてが作品の一部のようなもの。どんなに素晴らしい作品を展示していても、空間の空気や対応の仕方で、その印象は大きく変わってしまいます。
以下、この記事の要点をおさらいします。
- 絵の購入を直接勧めない
- 作家同士で内輪話をしない
- 来場者につきまとわない
- 弁解をしない
- 撮影OKなら明示する
- 価格表示はわかりやすく
- 無言・無表情は避ける
結局のところ、「自分が訪問者だったらどう感じるか?」という視点に立ち返ることがいちばん大切です。
売ろうとしなくても、来場者との良い時間が作れれば、結果はあとからついてきます。
