公募展や展覧会での展示の際、
作品だけでなく作家のプロフィールや展示歴を会場に掲示したり、
ホームページやポートフォリオに記載したりします。
鑑賞者にとってその作家がどういう活動をしてきたかを知る重要な情報です。
ここでは世界基準になるべく沿って解説していきます。
画家の展示経歴(CV)は、「何をしてきたか」を簡潔に伝えるための資料です。
審査・営業・自己紹介など、見る側が短時間で判断できるように整理するのが重要です。
難しく考える必要はなく、「誰が見ても同じ意味に読める」ことが基本になります。
CVとは何か
CVはラテン語で「人生の行路」を意味するcurriculum vitae(カリキュラム・ビタエ)の略で、作家活動の履歴をまとめたものです。通常は「CV(シーブイ)」と略されます。
英語ではBiography(バイオグラフィー)の意味でもありますが、
日本では文章にまとめてあるもを指す場合もありCVと区別されます。
CVには作品そのものではなく、「活動の積み重ね」を客観的に示す役割があります。
とにかく淡々と事実の羅列に徹し、「〇〇参加しました」、「展示しました」などの文章は不要です。
ポートフォリオが「作品の質」を見せるものだとすれば、
CVは「活動の継続性や方向性」を伝える資料です。
フォーマットは提出先によて微妙に違いますから
基本のCVと簡略版CVを作っておいて、
提出先の指定によってアレンジするというのが作業的にも楽です。
基本構成
最低限、以下があれば成立します。
- 名前(作家名)※よく読み間違えられるのであればフリガナや英語表記もつける
- 生年 (例:1986 福島県生まれ) ※「年」は不要、生まれは都道府県で記載
- 活動拠点(例:福島県在住)※行数に制限がある場合は生年とまとめる場合もある。
- 学歴 新しい順に記載※基本的に高校以下の学歴は書かない。入学年も不要、在学中は『在籍』と記載
- 個展歴 新しい順に記載※開催年、展覧会名、開催会場名、開催都道府県の順で記載
- グループ展歴 新しい順に記載 ※開催年、展覧会名、開催会場名、開催都道府県の順で記載
- 受賞歴 新しい順に記載※受賞した年、公募展名、賞名を記載。開催会場名、開催都道府は不要
- 収蔵・掲載 ※掲載されたメディアやTV出演歴。後から追えるような情報を掲載します。
例)2024 巻頭特集 @月刊アートコレクターズNo.186
ほかにも公募展や美術館に提出するものだと連絡先(TEL,メールアドレス,住所)やHPのURLが記載されます。
不特定多数に公開を想定しているなら住所やTELは省略可
学歴|Education
大学、大学院と新しい順に記載します。
※基本的に高校以下の学歴は書かない。入学年も不要、在学中は『在籍』と記載
例)2004 〇〇大学〇〇学部〇〇学科卒業
英語表記の場合、学歴の表記は「学位名、専攻、大学名(英語正式名称)、取得年」の順が標準。
学校名はローマ字、英語で正式な名称があればそちらを記載
個展歴|Solo Exhibitions
個展または二人展までを含めた展示歴を開催年、「展覧会名」、開催会場名、開催都道府県の順に最新順に記載
開催年に年号はなし「2002」とだけ記載
例)
2008 「〇〇展」〇〇ギャラリー/東京
2006 二人展「〇〇展」〇〇ギャラリー/宮城
なぜ二人展はグループ展じゃなく個展に含めるのか。
二人展は個展に次ぐ自らの空間を演出でき、得られる経験や労力的にも個展に近いからと言われています。
グループ展歴|Group Exhibitions
個展歴と同じく開催年、「展覧会名」、開催会場名、開催都道府県の順に最新順に記載
開催年に年号はなし「2002」とだけ記載、都市名は書かず都道府県のみ、
英語の場合はKyoto, Japanのように都道府県(または都市名)、国で表記します。
例)2026 「〇〇展」〇〇画廊/東京
会場、開催地などを、| /などで区切ったりしますがCV内では表記は統一しましょう。
賞歴|Awards
本来は「受賞歴」のみで入選、佳作は記載しませんが行数に対して書くものがない場合は記載する場合もあります。
返済をしなくてよいお金を授与される助成金・奨学金・アーティストインレジデンス(AIR)も含めます。
個展歴などとは違い
受賞歴は受賞年、公募展名、賞名を記載(私は記録しているデータ上では展示会場、都道府県も追記しています)
助成金の場合は年、助成制度名、助成団体を記載します。
例)2026 「〇〇公募展」 〇〇賞
入選、佳作、入賞の違い
入選・・・応募作品が、一定の審査基準をクリアして「選ばれた」状態
入賞・・・入選した作品などの中から、さらに上位の成績や優れた評価を認められ「賞」を受けた状態
佳作・・・「優秀な作品」という意味で一般的には「選考には入っていない」とされ入選以下の意味でしたが、近年の公募展によっては入選<佳作<入賞で入選以上入賞以下になることが多い。
入選数より少ないならば佳作が上、入選数のほうが少なければ入選より下と判断する。
掲載歴|Media
「参考文献」として記載する場合もあります。
雑誌、新聞、書籍など出版物に掲載された文章、記事、TVなどの出演歴アーティストとしてのあなたについて、作品について、あなたがかかわった展覧会などが取り上げられたすべての刊行物を記載します。
展覧会のお知らせのような記事は単なる告知なので雑誌などに載っても掲載歴には含みません。
ただいつのどの媒体、どの項に掲載されたか記録は取っておきましょう。
雑誌書籍掲載の場合・・・掲載年 書籍名 記事名 項/刊行日付
TV・ラジオなどの場合・・・出演年 出演局名 コーナー・番組名 放送日付
例)2023 〇〇号〇〇本「〇〇特集」No.〇〇 〇〇項/(10/20発行)
英語の場合は記事を書いた人物のラストネーム,ファーストネーム 記事や文章のタイトル 文献名 日付の順で記載
コレクション/コミッションワーク
美術館が買い上げてくれた場合やアーティストとして金銭が発生する仕事を受けた場合
コレクションの場合・・・収蔵年 美術館名 所在地
コミッションワークの場合・・・年 プロジェクト名 所在地
を記載しておくとよいでしょう。
例)
2021 〇〇プロジェクト イラスト制作 /福島
2021 〇〇美術館 東京
これはプロのアーティストのCVなので生活のためにアートと関係ない仕事の成果は含まれません。
コレクションも有名企業や美術館に収蔵された場合のみです。親戚の家や近所の商店などに飾られているものは記載しません。コミッションも公的機関や大企業とのコラボなど第三者から見てすぐわかる有名どころのみ記載します。町内会の冊子の表紙などは記載しません。
経歴を記録しておく
このようにこれまでの展示歴などを記録しておくことが必須です。

- 開催年月日
- 展覧会名
- 会場名
- 都市名(都道府県)
- ジャンル(個展/二人展、グループ展、公募展、同人誌即売会、掲載歴、その他イベント、コミッションなど
- 賞歴
私は表計算ソフトで1行ずつ管理しています。
使用する項目だけコピペすればいいので書類作成がかなり楽になります。
(青い項目部分が実際に打ち込むところ)
プロフィールに全経歴を公開しています。(参考までに)
CV例
以下が筆者のスタンダードなCV例です。実際は提出先の規定に沿って作ります。

他に、ワークショップ歴、
美術館など公的機関への収蔵「コレクション」、
メディア露出経歴「参考文献」、「メディア」などを記載します。
幼少時代の受賞、大学までの学内展や文化祭での展示、
他に職歴や結婚などプライベートなことは記載しません。
本来ステートメントは別紙に記載するものでCVには記載しません。どうしても記載する場合は最末尾に記載します。
以上これまでの活動を端的に表すCV例でした。
新人のアーティストは書くことが少ないかもしれません。
大学の卒展でも友達同士で開催したグループ展でも、
展覧会やプロジェクト、アーティストのアシスタント歴、アートに関するボランティア歴、ステートメント、生い立ちなど考え方を柔軟にすれば何かしら出てくるかもしれません。
もし展覧会の作家プロフィールパネルを作るなら
以下は実際過去の展覧会にて掲示したプロフフィール例です

お恥ずかしながらきっちり国際基準とはいかないですが(多少アレンジしています)
これまで説明したCVの内容のほかに顔写真やSNS・ホームページのQRコードを記載しています。、
連絡先や他作品が見れる、問い合わせ先も兼ねたHPのリンクを追加して
本人がその場にいなくとも作品以外の作者情報が得られるようにしてあります。
このようにテンプレートを作っておくと
ギャラリーなどに提出したり自分で印刷して掲示したりする際にすぐ用意できます。
おわりに
上記のプロフィールパネルのように
実は国内ではCVの表記ルールが定まっていなく、国際基準のCVで統一されていないものがほとんどです。
アーティストもどう作っていいかわからない場合が多いです。
ヒントとしては欧米のオークションカタログなどに記載されている
アーティスト経歴(CV)が参考になるかもしれません。
もしくは世界で活躍する日本人アーティストのホームページにCV欄があれば参考になるかもしれません。
世界で通用する格式あるオークションのカタログであれば、
少なくとも自分が独断で作るものよりは間違いがないはずです。ただし入手は困難です。
なのでまずは展覧会に足を運び
ポートフォリオや掲示してある作家プロフィールを参考にして実際に作ってみることをお勧めします。
ただアーティストである以上CVは作れて当たり前。
ようやくスタート地点に立ったということで。
CVは実際の作品以外のアーティストであるあなた自身のすべてです。
CVの一番の目的はあなたのことを知らない他人に
作品以外でアーティストのあなたを伝える重要な手段ということです。
関連記事
