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売れる絵と描きたい絵が違う
「売れる絵」と「描きたい絵」。
この二つの間で揺れ動くのは、
プロ・アマ問わず多くの画家が経験するリアルな悩みです。
- 好きなものを描いても売れない
- 売れ筋に寄せたら自分を失ったようで苦しい
- ギャラリーに好まれる傾向に合わせるべきか?
誰かに喜ばれる絵と、自分自身が描きたくて仕方ない絵が同じなら理想です。
でも、現実はそううまくはいきません。
このブログでは、「売れる絵」と「描きたい絵」の間にある差をどう埋めていくか、
そして「売れる絵とは何か」を冷静に分析していく方法を紹介します。
苦しくならず、表現と収入を両立させるためのヒントになれば幸いです。
「売れる絵」って結局なに?

まずは「売れる絵」の正体を冷静に見ていきましょう。
売れる絵=誰かのニーズに合う絵
「売れる」というのは、誰かにとって価値があるということです。
その価値は、以下のような視点で生まれます。
- 飾りやすい(インテリア的価値)
- 感情が動く(癒し、元気、共感)
- 流行している(SNS映え、モチーフ人気)
- 作家のファンになっている(ブランド的価値)
つまり、「絵そのもの」だけでなく、「どう見られるか」「どう届くか」が影響します。
売れる絵には傾向がある
ジャンルや市場によって異なりますが、よく売れる絵には以下の傾向が見られます。
- モチーフがわかりやすい(抽象より具象)
- カラフルで明るい印象(暗い絵は売れづらい)
- サイズが飾りやすい(小〜中サイズ)
- 価格が手頃(特に初見の客)
これは「良い悪い」の話ではなく、「売れやすさの傾向」です。マーケティングと同じで、相手がいて初めて成立する話なのです。
描きたい絵を描いてはいけないの?

ここで葛藤するのが、「自分が本当に描きたい絵はそれじゃない」問題。
表現は自由。でも誰かに見せるなら戦略が必要
芸術は自己表現。これは大前提。
でも、それを**「売りたい」「広めたい」「評価されたい」と思った瞬間、
それは社会と接続する行為**になります。
つまり「描きたいものを描けばいい」と同時に、
「伝える工夫や仕組み」が必要になるんです。
「好き」だけで描いた絵が売れなかった経験、ありませんか?
- 思い入れがあるのに誰にも刺さらなかった
- 1週間かけた絵が無反応で、30分で描いた落書きがバズった
このギャップこそが、売れる絵と描きたい絵の「ズレ」の正体です。
売れる絵を分析する方法

ここからは、「売れる絵とは何か」をより具体的に分析していきます。
方法①:売れている作家を観察する
SNS・展示会・販売サイトなどで、
実際に売れている作家を10人ピックアップしてみてください。
以下の視点で共通点を探すと傾向が見えてきます。
- モチーフ(人物?動物?抽象?)
- 色使い(明るい?モノクロ?)
- サイズと価格
- 世界観やメッセージ性
- 顧客層(どんな人が買ってる?)
分析してみると、自分との違いがハッキリ見えてくるはずです。
方法②:販売の場ごとに売れる傾向を知る

- 百貨店:インテリアとして映える・万人受け
- アートフェア:話題性・キャッチーなビジュアル
- SNS経由の個人販売:感情に訴える・ストーリー重視
誰に売りたいかによって、売れる絵は変わるという視点も大切です。
「描きたい絵」でどう売るか?
では、「売れる絵」に自分を寄せるのではなく、
描きたい絵で売る方法はないのでしょうか? あります。
方法①:絵の「届け方」を変える


- 作品の背景や制作意図を言葉で伝える
- 顧客の暮らしにどう馴染むかを示す
- ストーリー性・作家性で引き込む
技術やモチーフだけで勝負せず、文脈や体験価値を加えると絵の意味が変わります。
方法②:作品の一部だけ寄せる
全ての絵を売れ筋にしなくてもいいんです。
「色は大衆に合わせる」「モチーフだけは寄せる」など、一部だけ合わせて橋を架ける方法もあります。
表現の芯を壊さず、接点だけ作る。これなら自己否定にはなりません。
「売れる絵」と「描きたい絵」を両立するために
最終的には、この二つをどう統合するかがカギです。
対処法①:「描きたいシリーズ」と「売れ筋シリーズ」を分ける
割り切って2ラインで制作する作家は多いです。
それぞれ違う目的・ターゲットに向けて発信することで、混乱せずに済みます。
対処法②:「売れた理由」を記録しておく
自分の作品で何が売れたかを記録・分析しましょう。
- このモチーフは売れやすい
- このサイズが反応良かった
- この投稿文が一番反響があった
過去の成功を蓄積すれば、「売れる絵の自分なりの定義」が見えてきます。
売れる絵って何だろう?
個展やグループ展などで自分の作品がずらりと並んだとき、
実際に絵が売れる瞬間がありますよね。
何度もそういう場を経験すると、「このシリーズは全然売れないけど、
こっちの色味やモチーフ、サイズの絵はやたら売れるな」というパターンが見えてくるものです。
例えば、赤い絵よりも青い絵がよく売れるとか、人物画よりも風景画の方が売れるとか。
こうしたデータは展示を重ねていくうちに自然と蓄積されていきます。
その積み重ねから導き出される「売れる絵の傾向」こそが、
自分にとっての売れる絵と言っていいでしょう。
つまり、売れた実績からわかる「売れる絵=自分の市場で受け入れられる絵」のことです。
おまけ:売れ筋ばかりだと売れなくなる?
実はコロナが流行する前はレジンアクセサリーを作って同人誌即売会などで販売していました。
そこでの経験ですがいろんな色のペンダントを作って並べていると、なんだか青いペンダント(寒色系)が売れるなぁ・・・。と気づいたんです。
そこで次回から寒色系だけをたくさん作って持っていったら売れはするけど売れ行きは明らかに悪かったんです。
そこで赤やオレンジ、紫なども一緒にならべてみると
ほかに色もちらほらと売れはしますが圧倒的に青いペンダントが売れていくわけです。
アートの展示会でも
よく「このシリーズはよく売れたから、今回も同じ路線で並べよう」と考えがちですが、
実はそれが落とし穴になることがあります。
売れ筋ばかりで構成された展示は、一見すると安定感がありますが、
なぜか買い手の足が止まりやすい。
これは、作品の魅力ではなく展示全体の“空気”が均質化してしまうからです。
売れ筋だけを並べると売れなくなる理由
人は比較の中で「選びたい」という本能を持っています。全部が似たテイストで並んでいると、「どれでもいい」になり、「どれもいらない」に変わってしまう。つまり、選ぶ楽しさがない展示は、それだけで“売れない空間”になってしまうのです。
さらに、「これは売れるだろう」と考えて描かれた作品は、どこかあざとさが滲みます。鑑賞者は無意識のうちにそれを察知し、「これは本当に描きたくて描いたのか?」と心が冷めてしまうのです。逆に、少し異質でも「これだけは描かずにいられなかった」という熱量がある作品は、強く響くものがあります。
だからこそ大切なのは、売れ筋を否定するのではなく、あえて異質な作品を混ぜ、展示に緩急と奥行きを生むことです。売れ筋×自分の表現のバランス、その交差点を見つけることで、売れ筋も“本当に売れる一枚”になります。
売れる展示とは、作品のクオリティだけでなく、構成力と誠実さで決まるのです。
実践ワーク|自分の「売れる×描きたい」軸を探る
最後に簡単なワークを紹介します。紙とペンを用意してください。
- 「今までで一番売れた作品」を3つ挙げる
- 「今までで一番楽しかった作品」を3つ挙げる
- その共通点・違いは?
- その中で「楽しめて、売れた」作品はある?
この作業で、自分にとっての「売れる」と「描きたい」の接点が見えてきます。
終わりに|葛藤しながら進めばいい
「売れる絵」と「描きたい絵」のバランスで悩むのは、
真剣に絵と向き合っている証です。
誰だって最初から完璧なバランスなんて取れません。
でも、意識して考え続ける人だけが、納得のいく場所にたどり着けるのも事実です。
売れる絵を冷静に分析し、自分の表現との接点を模索しながら、
あなたらしい活動の形を築いていってください。

