目次
こんにちは、ペン画家の安藤光です。
今回は、「芸術家になるにはデッサンが必要ですか?」
という多くの方が抱く疑問について、
目的や表現スタイル別に深掘りしながら解説していきます。
結論を先に言えば、
デッサンは必須ではないが、強力な武器になるものです。
ですがその価値は、目指す表現や活動内容によって大きく異なります。
このブログでは、以下のような観点で「デッサンの必要性」を見ていきます。
- デッサンとは何か?
- なぜ芸術家にとって「必要」と言われるのか
- どんなタイプの作家には必要?不要?
- 実際のプロ作家たちはどう考えているか
- デッサン力が足りない場合の補い方
- 独学者へのアドバイス
あなたの活動目的に合わせて、必要な学びを選び取る手助けになれば幸いです。
デッサンとは?ただの模写じゃない
- 形を正確に捉える観察力
- 明暗や質感を表現する技術
- 空間構成や比率の理解
これらすべてを鍛えるトレーニングがデッサンなのです。
美術系の学校や基礎美術教育で重視されるのは、「手の技術」以上に、見て、考えて、再構築する能力が重要とされているからです。
なぜ芸術家にデッサンが重要視されるのか?5つの理由
理由1:表現の自由度が飛躍的に向上
絵を描くということは、目の前の情報を「自分なりに再構成」する創造活動です。
デッサンで培った観察力と表現技術があれば:
- 思い描いたイメージを的確に形にできる
- 意図的な歪みや省略も効果的に使える
- 写実から抽象まで幅広いスタイルに対応可能
理由2:あらゆるジャンルで応用が利く
デッサンの基礎は以下すべての分野で活用できます:
- ファインアート:油絵、水彩画、日本画、版画
- 商業アート:イラスト、漫画、アニメーション、デザイン
- デジタルアート:CG、コンセプトアート、NFTアート
特に商業分野では「描ける」ことが前提条件となる場合も多いのが現実です。
理由3:プロフェッショナルとしての信頼性
ギャラリー関係者、コレクター、クライアントは技術的安定性を重視します:
- 展示作品の品質保証
- 制作期間の予測可能性
- 修正・調整への対応力
理由4:指導・教育分野での活動機会
芸術家として活動する上で重要な収入源:
- 美術教室やワークショップの講師
- オンライン教材の制作・販売
- 企業研修やチームビルディング
理由5:自己分析と表現の深化
デッサンを通じて:
- 表現技法の意識的な選択が可能
- 自分の視点や感性の特徴を発見
- 苦手な部分の客観的把握
「デッサン不要論」の根拠とその妥当性
一方で、現代アートの文脈では「デッサンは必須ではない」という考え方も確立されています。
根拠1:コンセプト重視の現代アート
抽象画・コンセプチュアルアートでは:
- 「何を描いたか」より「なぜ描くのか」が評価される
- 技法よりもアイデアや思想の独自性が重要
- 意図的な「下手さ」が表現として機能する場合も
成功例:
- ジャン・ミシェル・バスキア(グラフィティアート出身)
- 草間彌生(独自の世界観が評価)
- バンクシー(技法より社会的メッセージ重視)
根拠2:「不完全さ」から生まれる個性
- 線の歪み、形の崩れ、偶然性
- 習得された技法にない自然な表現
- 既存の美術教育の枠を超えた自由な発想
私自身も義務教育以降は美術に触れず、16年間の芸術活動を続けています。百貨店での個展でも作品が売れているのは、デッサン力以外の要素が評価されているからです。
ただし、デッサンを学んでいると表現の幅は確実に広がると実感しています。
根拠3:デジタルツールによる補完
- 現代では以下のツールが技術的不足を補えます:
- 写真加工・合成技術
- 3Dモデリングソフトによる下絵作成
- AIによる構図・色彩提案
- トレス機能付きドローイングアプリ

私も義務教育以降美術には触れてきませんでした。
それでも芸術活動16年描き続けていますし、百貨店で絵も安くない値段で何とか売れています。
結局はやる気と行動だと思います。
ただデッサンを学んでいると表現できる幅は広がると感じています。
目的別にみる「デッサンの必要度」
目的・分野 | 必要度 | 理由・備考 |
---|---|---|
美大・芸大受験 | ★★★★★ | 入試科目として必須。合格の最低条件 |
写実画・肖像画 | ★★★★★ | 観察力と形の正確性が作品の価値を決定 |
商業イラスト・漫画 | ★★★★☆ | クライアント要求に応える技術的最低ライン |
ペン画・細密画 | ★★★★☆ | 構図設計と質感表現で差が出る |
美術教師・講師 | ★★★★☆ | 指導者としての信頼性に直結 |
デジタルアート | ★★★☆☆ | 基礎があるとツール活用が効率的 |
抽象画・現代アート | ★★☆☆☆ | あれば表現の選択肢が増える |
趣味の絵画 | ★★☆☆☆ | 楽しみ方次第。上達実感には有効 |
アウトサイダーアート | ★☆☆☆☆ | むしろ学習しない方が良い場合も |
プロ作家たちの実体験:デッサンとの向き合い方

写実系作家の場合
Aさん(油彩画家、個展歴20年) 「デッサンは毎日の準備運動。技術があることで、描きたいものに集中できる。逆に技術的な不安があると、表現に迷いが出る」
抽象系作家の場合
Bさん(現代アーティスト、海外展示経験あり) 「最初はデッサンを避けていたが、後から学んでみると表現の幅が格段に広がった。ただし、学ぶタイミングと方法は重要」
商業系作家の場合
Cさん(フリーランスイラストレーター) 「クライアントワークでは『描けること』が絶対条件。デッサン力があることで単価も上がり、リピート率も向上した」
デッサンをやるべきか迷っている人への判断基準

以下のチェックリストで自分の状況を確認してみてください:
✅ デッサンを優先すべき人
- 「描きたいものがあるのに、思うように形にできない」
- 「自分の作品にもっと説得力を持たせたい」
- 「美大受験を考えている」
- 「将来、美術関連の仕事に就きたい」
- 「基礎からしっかりと学び直したい」
🤔 状況に応じて判断すべき人
- 「今の表現スタイルに満足しているが、さらに上を目指したい」
- 「時間は限られているが、効率的に上達したい」
- 「独学で続けられるか不安」
❌ 急いでデッサンをする必要がない人
「既に確立された個性的なスタイルがある」
「今の自由な表現を続けていきたい」
「技術よりもアイデアで勝負したい」
「趣味として楽しく描ければ十分」
独学デッサン完全攻略法:効率的な学習ステップ

ステップ1:環境とモチーフの準備
基本のモチーフ選び
- 初心者:卵、りんご、立方体など単純な形
- 中級者:石膏像(手、足、顔の部分)
- 上級者:複雑な静物、人物全身
照明環境の設定
- 光源は1つに限定(窓光または電気スタンド)
- 影がはっきりと出る角度を選ぶ
- 一定の時間帯に描く習慣をつける
ステップ2:必要最小限の道具
鉛筆セット
- 硬い鉛筆:2H、H(薄い線、構図取り用)
- 標準:HB、B(基本の線)
- 柔らかい鉛筆:2B、4B、6B(濃い影、質感表現用)
その他の基本道具
- 練り消しゴム(部分的な明度調整)
- 普通の消しゴム(しっかりとした修正)
- 擦筆またはティッシュ(ぼかし用)
- 画用紙またはスケッチブック(B4サイズ推奨)
- カッターナイフ(鉛筆削り用)
ステップ3:段階的な練習メニュー
第1段階:形の把握(1-2週間)
- アタリ線での全体構図
- 基本図形での形の分析
- 比例関係の測定方法習得
第2段階:明暗の理解(2-3週間)
- 光源の方向と影の落ち方
- 固有色と光の色の違い
- グラデーションの作り方
第3段階:質感表現(3-4週間)
- 異なる素材の描き分け
- 反射、透明感、粗さの表現
- 細部と全体のバランス
第4段階:空間表現(4-6週間)
- 遠近法の実践応用
- 空気遠近法の理解
- 複数のモチーフの関係性
ステップ4:効果的な継続方法
毎日のルーティン
- 最低10分間の観察スケッチ
- 週に1回は1時間以上の本格的なデッサン
- 月に1回は違うモチーフに挑戦
記録と振り返り
- 作品にはすべて日付を記入
- 定期的に過去作品と比較
- SNSやブログで進捗を公開(モチベーション維持)
コミュニティ活用
- オンラインデッサン会への参加
- 美術教室の体験レッスン受講
- 同じ目標を持つ仲間との情報交換
「描けない」苦悩との健全な付き合い方
デッサン学習では必ず「自分の下手さ」と向き合う時期が来ます。この時期の心構えが継続の鍵となります。
成長の兆候を見逃さない
「目が肥えてきた」は成長の証拠
- 以前気づかなかった欠点が見える
- 他人の作品の良し悪しが判断できる
- 理想と現実のギャップを認識できる
技術は後からついてくる
- 観察力の向上が先行する
- 手の技術は練習量に比例
- 脳の理解と手の動きには時差がある
挫折を避ける心理的テクニック
完璧主義からの脱却
- 70%の完成度で次に進む
- 失敗作品も学習の一部として保存
- 「上手くなった部分」に着目する習慣
他者との比較を建設的に活用
- SNSでの他者作品は参考程度に
- 自分の過去作品との比較を重視
- レベルの近い人とのグループ学習
あなたにとって「描く」ことの意味を再考する
最後に、最も重要な問いかけをします。
あなたはなぜ絵を描くのですか?
- 「上手くなって人に認められたい」
- 「心の中にあるものを形にしたい」
- 「描いている時間そのものが好き」
- 「将来の仕事に活かしたい」
- 「ただなんとなく、でも続けていたい」
この答えによって、デッサンの必要性は大きく変わります。
目的と手段のバランス設計
「上手くなりたい」欲求と「自分らしく描きたい」欲求
この2つはしばしば対立しますが、実は両立可能です:
- デッサンで基礎力を蓄える
- その上で意図的に「崩す」技術を身につける
- 技術的選択肢を増やしてから個性を発揮
- 基礎があることで「自由」の質が向上
2025年における芸術活動の新しい形
デジタル化が変える学習環境
オンライン学習の充実
- YouTube等での無料デッサン講座
- リアルタイム添削サービス
- VRを活用した立体感覚の訓練
AI技術の活用
- 構図提案ツールの普及
- 自動修正機能付きドローイングアプリ
- 個人の癖を分析する学習支援AI
新しい評価基準の登場
従来の技術偏重から多様性重視へ
- ストーリー性・メッセージ性の重要度上昇
- SNS映えする作品の商業的価値
- NFTアート市場での新しい評価軸
それでも残る基礎技術の価値
- プロフェッショナルレベルでの信頼性
- 教育・指導分野での需要継続
- 統合的な表現力の土台として
まとめ:デッサンは選択可能な強力な武器
重要ポイントの再確認
- デッサンは万能ではないが、強力な基礎体力になる
- 目指す表現の方向性に応じて、戦略的に学習を選択する
- 「描けるけど描かない」と「描けないから描かない」では表現の説得力に差が出る
- 一度は実際に試して、自分との相性を確認することが重要
- 継続可能な方法で、自分らしい表現を見つけることが最終目標
行動に移すための最後のアドバイス
今すぐできる第一歩
- 身近なものを5分間だけ観察して線で描く
- 美術館やギャラリーで多様な作品に触れる
- オンラインでデッサンの基礎動画を1本見る
中長期的な計画
- 1ヶ月間の試行錯誤期間を設ける
- 3ヶ月後の成長目標を具体的に設定
- 1年後の理想的な表現スタイルをイメージする
あなたの芸術家人生にとって最適な「学び」の形を見つけ、充実した創作活動を送れることを心から願っています。
継続的な創作活動と、それぞれの個性を活かした表現の発展を応援しています。