企画画廊とは?
まず「企画画廊」とは何か?
簡単に言えば、ギャラリー側が作家を選び、
展覧会の企画や開催の主導権を持って運営する画廊のことです。
作家の作品をただ貸すのではなく、ギャラリストのセレクトやテーマ設定のもと展示が組まれ、販売までを見据えたプロモーションが行われます。
多くの場合、企画画廊はギャラリストが専門的な目で作家を選び、彼らの作品を継続的に支援しながらブランド化していく場所です。
ここに参加することは作家にとってキャリアの一歩となり、成功の土台にもなり得ます。
貸し画廊と企画画廊の違い

貸し画廊は「スペースを借りるだけ」の仕組みです。
作家が自分で企画や集客、運営のすべてを行い、画廊に使用料を支払います。
自由度は高いものの、集客や販売の責任が重く、リスクも大きい。
一方、企画画廊はギャラリーが企画や集客、プロモーションを担い、
作家は作品制作と展示に専念できます。場所代はかからず、売り上げから手数料として引かれます。
販売に向けた営業もギャラリーが行うため、
成功確率が高まる反面、
ギャラリー側のセレクトに合わなければ参加は難しいという側面があります。
企画画廊のメリット
1. プロの目によるセレクトで信頼性が高い
企画画廊はギャラリストが「これは面白い」「将来性がある」と感じた作家だけを選びます。
そのため、ここで扱われる作品は一定のクオリティと市場性が保証されているといえます。
作家にとっては、この「選ばれた」という事実自体が大きな信用となり、
購入者やコレクターからの信頼を得やすくなります。
また、企画画廊で展示している作家というブランドが、
次の仕事や展覧会へ繋がることも少なくありません。
2. 集客・宣伝の負担が軽減される
自分でDMを作って配る、SNSで告知し続けるのはかなり大変です。
企画画廊の場合、ギャラリー側が招待状の発送やメール配信、SNS発信、メディア対応などの広報活動を行ってくれます。
これにより、作家は制作に集中でき、展覧会運営のストレスから解放されます。
しかも、ギャラリーは定期的な来客を持っているため、集客が安定しやすいのも大きなメリットです。
3. 販売ルートが確立されやすい
企画画廊はコレクターや企業とのネットワークを持っており、作品の販売に繋げる役割を果たします。
個人作家が自力で販売先を開拓するのは難しく、時間もかかりますが、ギャラリーの存在は強力な武器になります。
特に初期の段階で信頼できる販売ルートがあるのは、経済的な安定と制作継続のために非常に重要です。
4. 継続的なサポートが期待できる
企画画廊は単発の展示に留まらず、長期的に作家を支援することを目指します。
そのため、作家の成長やキャリアアップに応じて、個展やグループ展への参加、アートフェア出展など様々な機会を提供してくれる場合が多いです。
また、作品のクオリティや方向性についてギャラリストと相談できることもあり、制作に対するフィードバックが得られる貴重な環境となります。
5. 作家としてのブランド価値を育てやすい
企画画廊に所属すると、作家名がギャラリーのブランド力と結びつくことで、知名度が上がりやすくなります。
ギャラリーが積み重ねてきた実績や信頼が、作家の評価を高める後押しとなるのです。
結果として、作品の価値も向上し、より多くの支持者やファンを獲得しやすくなります。
企画画廊のデメリット
1. ギャラリーの方針に左右される
企画画廊はギャラリストのセンスや方針によって動きます。
そのため、ギャラリーの考えやカラーに合わなければ、展示や販売の機会が減る可能性があります。
作家の自由な表現とギャラリーのビジネス戦略が必ずしも一致しないこともあり、意見の衝突や妥協が必要になる場面もあります。
2. 参加までのハードルが高い
企画画廊に所属したり展示を行ったりするには、一定の実績や評価が求められることが多いです。
また、ギャラリー側から声がかかるのを待つか、自ら売り込む必要があり、これが初心者にとっては壁となります。
長期的な努力と実績積み上げが必要なため、すぐに企画画廊で成功できるとは限りません。
3. 売上の一部を手数料として差し引かれる
企画画廊は販売のためのサポートや運営を行う代わりに、売上の30〜50%程度を手数料として受け取ることが一般的です。
作家にとっては収入が減る計算になるため、その分を制作費や生活費に回す必要があります。
この割合はギャラリーによって異なるため、契約時の確認が重要です。
4. 自由な表現や企画が制限される場合がある
企画画廊は売りやすさや市場性を重視するため、作家の表現やテーマに制約を設けることがあります。
これにより、作家が試したい新しい表現や実験的な作品が却下されるケースもあります。
自由に制作したい作家にとってはストレスになることもあるため、ギャラリー選びは慎重に行う必要があります。
5. 契約条件や展示期間などの拘束があることも
企画画廊は契約書に基づいて展示を行うため、期間や内容の拘束が発生します。
急なキャンセルや変更が難しい場合も多く、作家側の都合で柔軟に動きづらい側面があります。
また、継続契約が前提となる場合、長期的なコミットメントが求められることもあります。
企画画廊で取り扱われやすい作家とは
1. 独自性とギャラリーの方向性がマッチしている
企画画廊は自らのブランドイメージや顧客層に合う作家を選びます。
作家の作品コンセプト、作風、テーマがギャラリーの方向性と調和しているかが重要です。
- 例えば、現代アートを扱うギャラリーでは前衛的な作家が好まれ、
- 伝統的な日本画中心の画廊なら写実や古典技法の作家が選ばれやすい傾向があります。
作家自身が複数のギャラリーをリサーチし、相性の良い場所にアプローチすることが効果的です。
2. 継続的に作品を制作・発表できる安定感
企画画廊は単発の展覧会ではなく、長期的に作家を支援し育てることを目指します。
そのため、定期的に質の高い作品を制作し続けられる作家は信頼を得やすいです。
納期や展示準備に対する責任感、展示に向けた積極的な取り組みもポイントとなります。
3. プロ意識とコミュニケーション力がある
企画画廊との関係構築には、作家のプロ意識が欠かせません。
展覧会の準備や宣伝協力、ギャラリストとの連絡調整など、多方面での協力姿勢が求められます。
信頼関係ができると、ギャラリー側も積極的にサポートや新たな機会を提供してくれます。
4. 実績や評価がある程度ある場合有利
賞歴、他ギャラリーでの展示経験、メディア掲載など、一定の実績がある作家は企画画廊に声をかけられやすいです。
初めての企画画廊参加なら、まずはグループ展やアートフェア出展、コンペ受賞などで実績を作るのが近道となります。
5. 自分のブランドやビジョンを明確に持つ
企画画廊は単に作品を並べるだけではなく、作家のブランド価値を高める役割も担います。
作家自身が作品コンセプトや将来の方向性をはっきりさせていると、ギャラリーも売り込みやすくなります。
また、自らの活動を積極的に発信する姿勢も求められます。
最新の企画画廊への売り込み方法

かつては「紹介がないと無理」「郵送でポートフォリオを送っても返事がない」というのが企画画廊への一般的な売り込みのハードルでした。
しかし現在では、SNSやオンライン展示、アートフェアの出展など、作家自らが見つけられるための「発信型営業」が主流になりつつあります。ここでは最新の5つの方法を紹介します。
SNSによる発信力=現代の“営業ツール”
現在、多くのギャラリストがInstagramやX(旧Twitter)で作家を探しています。
特にInstagramはビジュアル中心であり、
作品の「世界観・継続性・反応」が一目でわかるため、発見ツールとして最も有力です。
SNS発信のポイント:

- 制作過程や思考の共有(作品解説は短くても有効)
- ハッシュタグ戦略(#contemporaryart #galleryartist など英語も活用)
- 作品単体より活動の継続性と自己ブランディングを意識
📝ギャラリストからDMが来ることも珍しくなくなりました。
「作家名で検索しても何も出てこない」は機会損失になります。
作家側も企画画廊のアカウントを積極的にフォローすることも大切です。
オンラインポートフォリオの整備
紙のポートフォリオはもう「補助資料」です。
現代では、ウェブサイトや作品ページを持っていること自体が信頼材料です。
最低限整えるべき内容:
- 高画質の作品画像(全体+部分)
- 作家ステートメント・略歴(英語版もあると◎)
- 展示歴・受賞歴(時系列)
- 連絡先とSNSへのリンク
📝NoteやSTORESの「作品解説ページ」でも十分に営業材料になり得ます。
公募・コンペ・アートフェアへの出展での“見つかり方”

ギャラリーは自ら展示に足を運び、作家を探しています。
- ターゲット層が観に来そうな企画展に参加
- 審査員にギャラリストが含まれるコンペに応募
- ART FAIR ASIA・Independent Tokyo などでのブース出展
📝アートフェアでの売り込みは営業活動ではなく“現場を見せる”行為。
名刺を忘れず、在廊中は「いつも誰かに見られている」前提で行動を。
ギャラリーが主催する公募展に出すのも原画をギャラリストに見てもらえる営業の一つです。
積極的に検討してみましょう。
⑤ ギャラリーへの“ラフすぎないDM”
いきなり展示希望を押しつけるのではなく、「ご挨拶と作品紹介」という形の連絡は今でも有効です。
メール例:
件名:作家〇〇〇〇 作品ご紹介のご連絡
はじめまして。私は〇〇(拠点・略歴)という作家です。
貴ギャラリーの展示を拝見し、方向性に深く共感しました。
今後の活動をご覧いただけましたら幸いです。
ポートフォリオ:〇〇URL
SNS:〇〇
どうぞよろしくお願いいたします。
ポイントは、**自分が一方的に“展示させてほしい”ではなく、
「方向性の相性」を伝えること。
**ギャラリストは「合う作家」を探しているので、無理な押し売りにならないように。
⑥ リアル展示を通じて「共通の知人」経由で紹介を受ける
紹介が一番強いのは今も昔も変わりません。
グループ展や小規模展示に出ることで、共通の関係者が増え、推薦を受ける機会が生まれます。
- 一緒に展示した作家から紹介してもらう
- 観に来てくれたギャラリー関係者と会話し、種をまく
- 自分の在廊中の立ち居振る舞いが紹介に繋がる
📝紹介は「縁」だと思いがちですが、それを引き寄せる“行動と振る舞い”は戦略で変えられます。
まとめ
企画画廊で成功するためには、
ギャラリーの方針や市場の動向を理解し、
自分の作風やキャリアプランを明確にすることが重要です。
今は「選ばれる」のを待つより、「見つかる」ための土壌を整える方が早い時代です。
SNSの発信、
オンラインポートフォリオの整備、
展示実績づくり……すべてはギャラリストに“安心して扱える作家だ”と思わせるための材料です。
売り込みは「口下手な営業」ではなく、「整った自己紹介」。
チャンスは、整えている人のところにしかやってきません。
作家としての自覚とプロ意識を持ち、
ギャラリーとの信頼関係を大切にしながら、
自分らしい表現を追求し続けてください。