展覧会アーカイブ:余白のアートフェア福島広野 ed.2

本記事は、次回以降参加する方が参考になるよう、自分の記録としても詳細を記載しておく。

県内でアートフェアが開催されるということで面白そう・前回知り合い作家が出ていたこともあり
ぜひ参加したいとエントリーした。(エントリー料1500円)

イベント詳細

展覧会名
『余白のアートフェア / MARGINAL ART FAIR 福島広野』

開催期間
2025年12月6日(土)〜12月7日(日)

開催場所
福島県双葉郡広野町 広野中央体育館
〒979-0408 福島県双葉郡広野町中央台1丁目

参加アーティスト

愛☆まどんな / あるほなつき / 安藤光 / 青木みのり / 青山紗え / アートひろ / アシリ・レラ / Ayaito Marron / CHiNPAN / えいじまみずほ / FlyD / 花塚美早 / 池原悠太 / 石倉かよこ / 上林泰平 / カサハラユーコ / 柏倉風馬 / 金藤みなみ / 北本晶子 / 霧筆畏夢 / 小関一成 / オリハ・クズユラ / アウグステ・ルビカイテ / ルーシー・ニチャイ / 真吏奈 / 松本悠以 / 松岡智子 / 松崎大輔 / ミルヨウコ / 宮坂青 / SAYA MIZUNO / mom / なかしまさや / Narumi Kawase / nia / 西川恵子 / 西永和輝 / Yasuko OKAMOTO / オガワミチ / 緒方智奈美 / マリア・プロシュコウスカ / ヴラーダ・ラルコ / リナ・ロマヌーハ / Roy Taro / 酒井祥子 / さかとくみ雪 / 櫻井智 / 佐々木あおい / サワダモコ / セノオシノブ / 柴田直樹 / マリーナ・タルットー / Miu SHINODA / 新谷裕也 / 曽根絵里子 / Koki SUGITA / 鈴木紅璃 / 舘星華 / 竹腰隼人 / TAKAHASHI Toshio / 田村勇太 / 田中直樹 / 田中武 / 鳥本采花 / 植木裕大 / 山本千鶴 / 山崎晴太郎 / よりきり / 油井綾子 / 結城幸司 / アンナ・ズヴャギンツェヴァ

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エントリーから審査合格まで

エントリー後、CVと作品画像を提出する。CVは海外の公募に出すような世界基準のものをということで書き方マニュアルを見ながらなんとか資料を作り提出。

そのうちの提出項目の一つ
「未決のテーマ」に寄せて が以下である

私の作品は、無心で線を重ねていく反復行為のなかから生まれます。そこに描かれるのは、あらかじめ決められたかたちではなく、どこかに“たどり着く”ことも意図していない、終わりのない風景です。
それは、成果や意味を求める現代社会の価値観に対する、静かな抗いでもあります。

今回のテーマである「未決の風景」という言葉に触れたとき、私は自分の制作と深く重なる感覚を覚えました。
風景とは、単なる視覚的な景色ではなく、そこに立つ私たちの「存在」と「世界」との関係性そのものなのだと、この言葉は教えてくれます。

私が描く線の集積もまた、過去の記憶とこれからの予感とのあいだを漂いながら、どんなかたちにもなりうる柔らかい構造を保っています。定まらず、決めつけず、誰かのまなざしによってその姿を変えていく。

「未決の風景」とは、すでにどこかにあるものではなく、私たちの視点と選択によって、いまこの瞬間も生成され続けているもの。
私の作品もまた、そのような風景の一部として、鑑賞者ひとりひとりの中に、異なる輪郭を描き出していけたらと願っています。

安藤 光

最終審査は作家経歴と作品を審査員による採点によって行われた。
(採点方法は詳しくスレッズに書かれている)
ふたば未来学園美術部生徒さまによる審査員とする審査方法も興味深かった。
審査の様子


審査は話し合いによって結果を決定する方式ではない。これは話し合いによってジャッジが他のジャッジの意見に引きずられたり、例えば大人や専門家の発言に子どもや非専門家が萎縮するなどして自身の意見を言いづらく感じることを防ぐためだそう。

結果、安藤は2次審査後参加アーティストに進出された。

準備期間

まず出品作品は5点 
そのうち3点は税抜き1万円から5万円の範囲内
1点は1万円台、1点は制限なしの大作(アピール用)の構成だった。
ほか、現地販売限定の1万円以下DIG作品(掘り出し物)は制限なしで展開可(作品集やドローイングなど)
名刺、展示案内、ポートフォリオなどは自由に設置可
ブースは有孔ボード幅180cmを2枚割り当てられた。(フック貸出)

私は出品作品は決まっていたので資料書き次第提出、運営ECサイトには一気に公開されるわけではなく、順次タイミングを見て公開されていく仕組みだった。
参加作家の作品が定期的に公開されていくワクワク感もあり、
開催までの期待感を持続させる意味でもいい取り組みだと思った。

DIG作品は段ボールの隙間に入る数量にした。
いまだオンラインショップ販売のみで現地未公開だった
10cmスクエア作品を12点、
興味を持ってくれた方向けに作品集4冊を持っていくこととした。
(作品集は安藤光オンラインショップでも販売中)

開催前日設営~開催~終了

設営は開催前日午後から行われた。
私はローカル線で福島市から広野町まで4時間半ほど。
(東京からだと特急で3時間ほどらしい)

予定通りの13時に広野町の駅に着いた。まずは宿泊先ホテルに荷物を預けに行く。
それから徒歩で会場となる広野中央体育館へ。
ホテルから10分くらいで着いた。
会場では先に付いた作家さんがパネルやテーブル、椅子などを設営中だった。
私も非力ながら会場設営後、自分のブースで作品群を設置していく。(設営の様子

設営は、現場で周囲の作家との話し合いを重ねるなかで変更が入り、最終的に安藤ブースは横180×縦120cmのパネル2枚をフラットにつなげ、幅360cmの構成となった。
出品作品は5点という制約があったため、プロフィール等の掲示物やDIG作品を加え、結果的にブースを埋める形になった。

スクエア作品は1万円以下DIG作品

今年からは、来場者のブース滞在時間を延ばす目的で制作動画を再生するタブレットをブース内に設置しており、今回も同様の配置を行った。遠くからでも動画の存在が視認できるため、そこから近づいて観覧してもらう場面があり、一定の効果は確認できた。

設営終了後(18:00〜)、ホテル内レストランでビュッフェ形式の食事をとっていると、設営を終えた作家たちが次々と入店してきた。ほどなくしてレストランの一角に10人以上の作家が集まる状態となる。(知り合いの作家が数名いたことで、ぼっち飯にならずに済んだ。)
その後、23時頃までお茶やコーヒーを飲みながらアートに関する話題で盛り上がった。私は直近の東京展示で1週間在廊したにもかかわらず販売・賞にも至らず、今後の活動の在り方を考えながら今回の参加に臨んでいた。他の作家の悩みや活動内容を聞くうちに、多くの作家が同様の苦悩を抱えながら制作を続けていることを知り、制作アイディアが浮かぶと同時に、自身の課題についても整理が進んだ。

12/6(土) 1日目

朝7:00~ホテルで朝食をとり、ホテルからの送迎バスで会場まで向かう。
9:00~から簡単な朝礼があり、一日の流れや会計の仕方などが情報共有される。
9:30から開場、お客様も開場と同時に押し寄せるというわけでもなく一人また一人と増えていく感じで緩くはじまる。来場者と話してみると関東圏から数時間かけての来場に驚いた。もちろん地元の方が入場料1000円支払ってのご来場にも県民としては感謝の言葉もない。

各作家のブースを見て回り、作家本人と作品について話を交わしながら、自身のブースにも気を配る。合間には、自ブースにてパフォーマンスを兼ねたペン画制作も行った。

参加作家によるワークショップも開催時間中、入れ替わりで開催されていた。
子供たちや地元の高校生にも人気だった。

そうした時間を過ごすうちに、体育館である会場内は次第に冷え込み、あっという間に17時の閉場時刻を迎えた。関東のイベントと比べると来場者数は多くはなかったが、参加作家も含め、一人ひとりとじっくり交流できた一日だったと感じている。

17時40分頃、ホテルからの送迎バスが会場に到着し、車で来場していない作家たちが次々と乗車していった。ホテルに戻ってからは部屋で入浴の準備を済ませ、レストランへ向かう。

食事を始めた当初は空席が目立っていたが、次第に参加作家で席が埋まっていき、前日と同様の光景となり全国から集まった作家さんたちが0時近く迄アート談義で盛り上がる。まるで合宿のようで有意義な時間だった。私は大浴場が0時までだったので23時に大浴場へ、じっくり0時まで露天風呂を堪能した。

12/7(日) 2日目

二日目も同じく6:30ごろから朝食をとり、送迎バスの時間までコーヒーを飲んでいた。
その後バスで会場へ移動、前日と同じく9:00頃から簡単な朝礼、9:30から開場。
前日よりも来場者が目立つ。関東圏からのお客様もちらほら相馬やいわきなど県内のお客様も多い。
お客様と話しているとあっというまに12時を回り終了時間が刻一刻と近づいていく。

そんな中、作品集とDIG作品を購入してくださった方がいた。聞けば初めてアート作品を購入するという。それまで鳴かず飛ばずだったので、初めての作品購入に選んでいただけたことで救われた気持ちになった。

2日目は15:00に閉場。余白のアートフェアは幕を閉じた。

その後、自分のブースを撤収後、体育館内の什器、養生シートの片づけが始まった。
作品などの荷物はヤマト運輸で一斉発送だった。
それ以外は各自の手配や直接搬出だったようでサイズが範囲内ならヤマト運輸が簡単だった
床のモップ掛け含め現状回復が終わり、17:30ごろ、送迎バスで一旦ホテルへ、
帰りは岩沼駅まで特急で帰る予定だったので、極寒の駅で1時間以上待つ。
行きは4時間以上かかったが、帰りは2時間半ほどで帰宅。
私の怒涛の3週展示期間(東京→仙台→東京→広野)は余白のアートフェアで幕を閉じた。

終了後

結果としては終了時点でDIG作品1点と作品集1冊の売り上げだけであった。

ECサイトでは出品作品の取り扱いが続いている(2026年1月31日まで)

しかしながら、全国の作家と交流できたことは非常に有意義であり、今後の制作や活動における悩みを整理し、解決やヒントを得る良い機会となった。

興味深かったのは、展示終了後も運営と作家の間で、
「どうやったら運営が採算取れるか」
「各ブースでの魅力ある展示構成は?」
「地方での集客方法」など
今後の改善点について議論が続いている点である。

東京などの都市部で開催されるアートフェアでは、
動線や照明、空調などが事前に整えられ、
来場者数もある程度見込まれた状態で開催される一方、終了後の関係性は比較的淡泊なことが多い。

それに対して本展示は、最低限の骨組みのみが用意され、あとは現場にいる作家同士が話し合いながら形を組み立てていく仕組みであり、このような形式は初めての経験で新鮮だった。その余白のある運営姿勢から、アートフェアに対する情熱が作家側にも伝わり、参加者全員で作り上げていく文化祭のような感覚を覚えた。

次回があればぜひ参加したいと感じている。同時に、自身の作品をいかに魅力的に展示し、販売や集客へとつなげていくかについても、より具体的に考えていく必要がある。今回得たヒントを、まずは実行に移していきたい。

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