私の作品は、無心で線を重ねていく反復行為のなかから生まれます。そこに描かれるのは、あらかじめ決められたかたちではなく、どこかに“たどり着く”ことも意図していない、終わりのない風景です。
それは、成果や意味を求める現代社会の価値観に対する、静かな抗いでもあります。
今回のテーマである「未決の風景」という言葉に触れたとき、私は自分の制作と深く重なる感覚を覚えました。
風景とは、単なる視覚的な景色ではなく、そこに立つ私たちの「存在」と「世界」との関係性そのものなのだと、この言葉は教えてくれます。
私が描く線の集積もまた、過去の記憶とこれからの予感とのあいだを漂いながら、どんなかたちにもなりうる柔らかい構造を保っています。定まらず、決めつけず、誰かのまなざしによってその姿を変えていく。
「未決の風景」とは、すでにどこかにあるものではなく、私たちの視点と選択によって、いまこの瞬間も生成され続けているもの。
私の作品もまた、そのような風景の一部として、鑑賞者ひとりひとりの中に、異なる輪郭を描き出していけたらと願っています。
2025年12月『余白のアートフェア福島広野 ed.2』より