ガラスペン画/Glass Pen Drawing 解説

素材

2018年から制作しているガラスペンの線画は
主にケント紙、万年筆用顔料インク、ガラスペンを使用する(私がペン画を描くために選んだ画材

使用しているガラスペン

制作動機

2018年以前はおもにボールペンや万年筆で単色の線画を描いてきた。ペンで描かれる線画はほとんどが単色であり、ペン画表現を拡張する試みとして容易に色が変えられるガラスペンを使用して線画を制作。ガラスペンを使う以上、これしか描けないオリジナル性を追求してきた。
結果、線の色が筆記していくうちに作者の意思とは別に濃淡や色味が変えることができることを発見する。

テーマ

AIや画像生成技術が「偶然のように見えるもの」さえも一瞬で生み出せる時代において、
人間が手で無心に線を描くという行為の意味は、かえって見えにくくなっている。

しかし、重要なのは技術の新しさではなく、身体を介して時間が刻まれていく線の痕跡である。
AIには再現できないものがある。
それは、手のわずかな揺れ、集中状態の変化、潜在的な感情や記憶の影響といった、
人間の内部から滲み出る微細なゆらぎである。
そうした生理的・心理的な要素が重なり合うことで、
人にしか生み出せない“偶然の質”が立ち上がる。

本作品は、ガラスペンによって作者の意図から離れた筆記を試み、
その結果として偶然に生じる線の連なりを画面として提示する。
その蓄積的な行為は、デジタルが支配する時代において、
人間的でアナログな抵抗としての意味を帯びている。

現代社会は、あらゆるものに“意味”を求めすぎている。
SNS上では、作品も言葉も瞬時に解釈され、分類され、消費されていく。
そのような状況の中で、あえて意味を持たせないという姿勢自体が、
強い批評的メッセージとなる。

本作は、鑑賞者が容易に意味づけできない“空白”を提示する。
その空白が、観る者自身の思考を静かに立ち上げ、
「意味のないもの」と向き合う時間をつくり出すことを目的としている。

現在までのガラスペン作品は下記リンクから
https://hikaruando.com/Portfolio/glass-pen-drawing/